カテゴリー別アーカイブ: 3-1 リスクの予見

気を付けよう 年齢(とし)でゴマする 体重計

私は、毎朝起きてすぐ体重を測ります。夕食後の風呂上りに測るよりも体重は軽く、かつ体年齢も若く出るからなのです。この話は途中から少し怖い話になるかもしれません。途中をすっ飛ばして読んでいただいても構いません。

ディジタル体重計で表示される骨格筋率、体脂肪率、内臓脂肪率等にはあまり変化はなく見えますが、朝はなぜか若くでます。物理的に軽くなる時間だし、両足間のインピーダンスなどの非表示の値も関係しているかもしれません。測る時の体調により体年齢に±1~2歳の変化がありますが、高く出る場合の殆どは目標体重よりも重い時です。体重が目標値に近づく時には若く出て、何となく元気が湧きます。結局そういう時間に測る習慣となったわけです。

体重計には生年月日を登録しているので、誕生日に前日の表示に1がいったんは加わります。とはいえ、朝一番に体年齢50代と表示されるのは楽しく、年齢を忘れ仕事もはかどります。そういう心理を考えた表示を工夫しているとは思いますが、これでは他の体重計を買う気になれませんね(笑)。

その後で血圧を測るのが習慣でしたが、あまり変化がないので最近は省略しがちでした。忙しい時は体重計で体年齢が低く出るだけで、つい安心して省略するようになっていました。

このできごとの日まで少し無理な仕事が続き、電子機器の製作等で何度か未明に及び、睡眠不足が1~2か月続きました。好きな仕事でもあって、そして体年齢も若く表示され続けるので、仕事に邁進していたのでした。

その日は、夕方のリモート会議開始まで、ら頭はよく回り仕事がずいぶん速くはかどっていました。ひょっとして・・・と開始前に血圧を測ってみてびっくり、150を超えてます。ついでに測った体温は36.5℃で平熱より若干高いですが、血中酸素濃度は99%。血の巡りが良いわけなのかな、などと考える間もなく会議がはじまるので、深呼吸をして開始です。会議中に血圧がやはり高いかなと感じたのですが、1時間半後に無事終了。

夕方から寒くなり、会議後すぐにちょっと鼻をかんだところ、鼻血が少し出ています。さらにかむとぼたぼたと落ちて、さあたいへん。鼻血はここ数十年では初めてで、止血法はとっくに忘れています。タブレットに尋ね、うつむきで小鼻を抑える止血を20分行いましたが、一向に止りません。さらに続けましたが鼻の奥から口へも流れ、たいへんなことに。病院が閉まった時間なので、妻と相談し息子の家に電話してもらうと、すぐに救急隊を呼んでくれ10分もかからず到着しました。

このアクションはとても大事でした。以後その電話番号などを書いてよく覚えておくことにしました。ともあれ、救急隊員は救急車内で同じ止血法を強く行い鼻が痛いのなんの。血圧と酸素濃度を同時に測りながら行いますが、気が動転し190以上の血圧が表示されており、こんなにも高くなるのか!と驚くとますます高くなります。「落ち着いて口から深呼吸!」と何度か言われても口は血でふさがり時々吐き出す必要がありました。

15分続けてもらっても止まらず、救急隊員より「このまま救急病院へ向かいます。受け入れ可能先へ1時間近くかかりますが、鼻血で死ぬことはありませんから落ち着いて辛抱を」。なるほど、救急隊員はさすがに落ち着き、本当に良い仕事をするものです。

サイレンを鳴らしたので近所の人たちが出てきましたが、この際はすべて無視。タオルで鼻・口全体を強く抑えたままじっと我慢です。ガタガタ揺れるたびに漏れるので困りましたが。

ようやく某大学病院の救急医療入口に到着し、担架に座ったまま中に通されましたが、歩けるので担架を降り靴を履き少し待ちました。医師と看護師がてきぱきと作業を開始。出血元を見つけるために真っ赤に濡れたタオルを廃棄し、鼻孔内を麻酔するとのこと。

それからは鼻の内視鏡を何度も出し入れしました。痛くて目をきつくつむると「鼻孔も狭まるから目を開けるように」と何度か言われました。視界にスクリーンが良く見えますが、すぐぼけると内視鏡を取り出してレンズを清掃して入れ直すのでした。それがなかなか辛く、思わず声を出しますが、医師は粘り強く続けて、ついに出血箇所を見つけました。鼻孔の入り口よりも深い中ほどの動脈壁とのことで、さすがです。

時々鼻孔を掃除しつつ電気メスで焼結3回。その3回目は若い医師が行いましたが、その時だけ電極を握った右手がひどく感電して驚きました。出血は止まったようです。しばらく動けず、撮った写真などをスクリーンで見せてくれた後、左鼻孔に詰め物をいれてから待合室へ移動し待機。15分かと言われた待機時間はなんと45分ぐらいで、もう22時を過ぎ自宅に戻れたのは23時でした。出血後のためか多少フラフラでしたが、まずはベッドで上半身を起こしたような形で休みました。

3日間入浴禁止、鼻かみや鼻いじりは厳禁、運動を避け血圧を上げないよう、との指示を守り、3日は食事以外ほぼ何もせずひたすら椅子に腰かけてタブレットで読書しつつ我慢していました。血圧は120未満に落ち着いていました。昨夜からようやく風呂に入れ、急ぐ仕事をしようと考えていたら、なぜか別の急用が勃発し、これを書き始めるまでばたばたしていました・・。

さて、この出来事教訓はたくさんありますが、体の状態は適当に推測はせずちゃんと測って知るべきことと、リスクへ早く対処することの重要性を再認識した次第でした。老人に限らず健康診断の大切さは言うまでもありませんし、血液検査なども大事な信号を見逃しにくくしてくれます。

今回は危険信号で幸いだったのかもしれません。無理をし過ぎない生活に至急直していきたいと反省しきりです。ついだらだらと長く書いてしまいましたが一言でいうなら、「忖度体重計」だけに頼るとリスクを見落とします。

©2025 Akira Tominaga, All rights reserved.

胸騒ぎ リスクの予兆 すぐ動け

仮登録(2023年9月発表資料から)

いつもと違う風景から感じる違和感。違和感からリスクを感じる事例を紹介。

駅に向かう途中の風景がいつもと違う。人の流れが違う。 いつもと違う方向に歩いている人が多い気がする。 その方向には何があるのか? そうそちらには別の会社の路線の駅がある。 普段は使う人がそれほど多くない路線。4両編成の路線。わたしがいつも使う鉄道路線は10両編成。 もしかして、電車が止まっているのでは? もしそうなら、取る手段は何と何か。 それぞれの場合にどういった行動が必要か、、、などなど考えて行動した事例を紹介。 すぐに動くことの大切さ。といったことを記載予定。

超高齢社会の下準備(ある日妻の介護が必要になりました)

表題
『超高齢社会の下準備(ある日妻の介護が必要になりました)』
副題
『介護とは いずれ我が身 もうすぐ我が身』
皆様へ,
私たちは,令和5年11月4日に,健康管理士会交流サロン主催のパネルディスカッションにおいて介護の問題に焦点を当てました.杉並区で介護経験が豊富な参加者が集まり,お互いに介護に関する情報交換や,介護予防の啓発活動を推進している杉並介護者応援団の北原理事長による基調講演をお願いしました.さらに,パネラーの中川さんからは介護体験について具体的な事例をお話ししてもらって参加者全員で情報共有しました.
ファシリテータの岩石さんからの発言をご紹介します.
私たちはいま,超高齢社会を迎えており,誰もが介護者または介護を受ける立場になる可能性があります.介護保険を賢く利用することで,助けを求めることができる時代となりました.どれだけ努力しても不満が残ることもありますが,できることを無理せず行うことが,介護の基本です.まず,自分がどう生きるかを考え,介護をどう受けるか,どう提供するかを考えることが大切です.
この機会に,超高齢社会に向けた備えを共に考え,助け合いの精神で支え合いましょう.
なお,詳細については下記URLを参照ください.
レポート参照先「第2回健康管理士会交流サロン活動報告会レポート」

逃げ道を いつも忘れず 用意せよ

入社してから9年目の30歳。ある程度の業務を任され脂が乗っている時期のこと。
お客様との打合せ資料も出来上がり2年目の若手と富山まで出張を予定していました。 2-3日前から背中に針を刺すような痛みがあったが、我慢して仕事をしていました。 出張の朝、家内に背中を見てもらったら大きな水ぶくれが出来ていましたが、お客様との打合せを延期するわけにもいかず、2年目の若手では説明が無理なため、背中にガーゼと絆創膏で水ぶくれを覆ってもらって出張に出かけました。 激痛が時々あるものの我慢していましたが、満員電車の中でどうやら水ぶくれがつぶれたような感覚が背中に伝わりました。それでもなんとか飛行機に乗って富山まで行ってお客様との打合せを激痛に耐えつつ、なんとか初日を終えてホテルへ戻りました。
背中のガーゼを外して、新しいガーゼになんとか貼り換えました。手が届きにくい背中なのでかなり適当な貼り方ではありましたが、ひとまず完了。しかし、とても背中を下にして寝ることは痛みもあってできないので、うつ伏せになって寝ました。
2日目の打合せを終えて東京へ戻り、翌日は休暇を取って病院へ行きました。
医者からは開口一番。
「何を考えているのか。 入院ものだよ。 これで出張に出かけたのか。(あほか)」
(注:さすがに「あほか」とは言いませんでしたが、顔にはそう書いていました)
帯状疱疹でした。
早い治療をしていなかったために、背中のあざが消えるのに10年近くかかりました。
脂が乗っていたこともあり、全部自分でやろうという意識が強く、自分に何かあった場合のことは一切考えていませんでした。 2年目とは言え若手にも代理できるようにいろいろと考えておくべきでした。
最悪のケースを考えて、自分がダメな場合でも対応できるような逃げ道を用意しておくことが大事だと痛切に感じた出来事でした。
©2023 Fumiaki Tanaka All rights reserved.

健康におけるインシデントマネジメントの事例

会社勤めをしている自分にとって、毎年欠かさず受けているのが、定期健康診断です。検診後1か月たって、結果が通知されます。以前は結果を確認して、体重がどのくらい増えたとか血圧が少し高いということだけで、特にアクションを起こすようなことはありませんでした。

検診結果について、以前、産業医から説明を受けたことがあり、このまま放置すると内蔵肥満に起因する動脈硬化から、重大な疾患が発生する確率が大幅に高くなるというお話を聞く機会がありました。
そのことで定期健診のデータをインシデントと考え、大事故(大きな病気)の予防と考え行動する決意しました。自身の場合は血圧が高いことで、いろいろな取組みをしました。

どれがもっとも効果的かというはっきりとしたことは言えませんが、自身が取り組んでいることを列挙します。体重は減らす方がよいということと、塩分の摂取量が多いので①接種カロリーを考慮し脂っこい料理は避けること。ただし、ですから年末年始含めた長期休暇等はどうしても気がゆるむことあり、1kgから2kg増えることが常でした。休暇明けは、特に気を付けて調整するようにしています。②調味量は、塩分が少ないものの代替えできないかと考え例えば揚げ物等にソースの代りにゆず等をかける。③夕食後の40分程度のウォーキングを行う。(自宅付近のウォーキングコース、自身が設定したもの) ④塩分摂取が高い自身にとって、カリウムを多く含んだ食品である発酵食品(納豆)や乳製品(ヨーグルト)を毎日かかさず摂取する。⑤血圧測定を3日に1回程度は、決められた時刻に実施する。⑥体重は週に1回程度測定することを行いました。

以前、中学の同窓会で友人の医者に聞いたところ、酒は飲めればいくら飲んでもよいが、血圧の値は、低く抑えたほうがよいとのことです。その医者は、血圧が高めで、以前から降圧剤を飲んでいるとのことでしたが、自分は降圧剤を飲むほどではないと言われました。
アルコールについては、自身はコップ一杯程度で赤くなるタイプで、数年前会社の忘年会で、料理の用意できる前にビールだけ飲んで、体内のアルコール濃度が高くなり、意識失うような状態となることがありました。それ以来、控えるようにしており、付き合いで飲まなければならない雰囲気の場合でも最初に一杯だけにして、2杯目め以降はソフトドリンクを飲むようにしています。

以上、述べましたが、血圧対策としてどれがベストとは言い切れませんが、どれひとつ欠いてもいけないと思っています。これからも地道な取り組みをして大事故(大きな病気)の未然防止に取り組んでいきたいと思っています。

© 2016Mitsuhiko Tokunaga, All rights reserved.

放置した 小さいリスク 喉の骨

今年の夏、娘と甥を連れて、米国の友人宅にホームステイさせてもらうことになり、まずはアクションアイテムを洗い出すことにしました。

・航空券の予約

・航空券代金の調達と支払

・パスポート取得

・ESTA申請

・海外旅行傷害保険加入

・・・

まずは何をさておき「航空券の予約」です。これだけは出発の約3ヶ月前から動き始め、望んでいた日取りのフライトをそれなりの価格で押さえることができました。

その時に追加したアクションアイテムの一つに、「国際線での座席確認」がありました。提携便としての予約、かつ航空会社の業務時間外だったことから、その場で座席を確認できなかったのです。子どもたちにとっては物心ついてから初めての海外でもあり、「できれば窓側3席並び」「もしダメなら真中で良いので通路に面した3席並び」という希望を旅行代理店の担当者に伝えました。先方からは「平日昼間に座席確認して、また連絡します」という話でした。

それから私は、航空券代金を支払うための資金調達や、パスポート取得のための手続きに入っていきました。「これを外すと行けなくなってしまう」リスクへの対処を優先すべきだと考えたからです。

それらの目途がついてからしばらくして、はたと「そういえば、国際線の座席について、全然、連絡が来ないなぁ」と気付きました。代理店に連絡すると「確認するのでお待ち下さい」とのこと、その後の電話で「行きは、”xxF”が1席と”yyE”、”yyF”の2席になります」と言われました。

「3席並びにできなかったんですね」ということでその場は一旦、電話を切りましたが、“E”とか”F”とかいう番号に不安を感じ、座席表を調べてみると、真中エリアの更に真中という「外の景色も見られず、トイレに行く時は必ず通路側の乗客に『すみません』と声をかけなくてはならない、最悪の中でも最悪」の席であることが分かりました。その後、代理店にクレームの電話を入れると、先方も手配漏れであったことを認め、平謝り、かつ「キャンセルが出て座席を変更できないか、定期的にチェックして報告します」との約束となりました・・・

いくら謝られても、キャンセルが出なければ、他の乗客をどかすわけにはいかないですから、この席のまま、10時間以上ものフライトに耐えなくてはいけません。そのことを考えると、楽しいはずの旅行なのに、喉に一本、魚の骨がささったような気分になりました。「せめて一本、電話を入れて、座席を確認しておけば良かった」と思いましたが、こうなったら後の祭りです・・・

このことで唯一、良かったことは、“私の油断への戒め”ではなかったかと思っています。リスクの軽重はTo Doの優先度付けに影響する最大の要因と思いますが、大きいリスクだけを考えて物事をシリアルに処理してはいけない、たとえリスクは小さくても最低限必要なことは併行して処理すべきだと、心底、感じました。「行けない」リスクに対処した後、少し安心して滞ってしまっていた準備作業に、これから精力的に取り組もうと思える契機になりました。

© 2015 Masao Kawasaki, All rights reserved.

あわてず、騒がず、落ち着いて

初めて中国へ行った時、民族間の感覚の違いを経験しました。

海外旅行におけるリスク対応策として、「生水を飲まない」、「旅行先の気温を調べその季節の平均気温の高め低めを調節できる上着を持っていく」、「夜間の一人歩きはしない」ようにしています。食べ物が口に合わず、腹痛を起こした場合の頓服や頭痛・腰痛のための鎮痛剤、そして靴擦れのための傷テープを持っていくことも筆者のリスク対応策です。

これらが海外旅行の時の心得でもあり、想定されるリスクの予防策だと信じていました。ところが数年前に初めて中国へ行った時、予想を裏切られることが起こってしまいました。筆者の想定が甘かったのです。

漠然と中国の歴史や文化を学んだつもりであっても、その国土の広さの違いから距離に対する感覚が違うことを全く認識していませんでした。

中国という広大な国土の中で育った人と、日本のように車で1,2時間移動すれば、山が見えたり海が見えたりする狭い国土に育った人では、生活する上で距離感と時間感覚が異なってくるようです。

浙江省杭州市を観光したときのことです。杭州市の西側にある世界遺産「西湖」を遊覧船に乗って湖を周りました。「西湖」は山梨県の河口湖ほどの大きさの人造湖です。遊覧船を降りた後、案内役のSさんから「ちょっと西湖のほとりを歩きましょうか」と言われ、西湖の蘇堤を案内していただきました。その「ちょっと・・・」というあいまいな表現が筆者とSさんとの間で受けとめ方に違いがあったのです。

筆者の中で「ちょっと・・・」はブラブラ歩き、5,6分の散歩という認識でした。歩き始めて5,6分経った頃、「あのう、まだですか?」とたずねました。Sさんはそんな筆者にあきれて「まだ1つ目の橋を越えたばかりですからあと5つの橋を渡りますよ」と笑いながら答えます。

あとから知ったのですが、白堤と呼ばれる蘇堤には6つの橋がかかっており全長2.8kmの道になっているそうです。この6つの橋は錦帯橋と言われる美しい円弧の橋で、岩国市の錦帯橋はこれを模倣したそうです。

この数字だけを耳にすると「たった2.8kmか」と思われると思いますが、スニーカーではなくパンプスで30~40分歩くのはちょっと大変でした。先に聞いていれば次の目的地への移動は遠回りをしてもバスを使ったと思います。

心の中で「6つの橋なんて聞いていないのに」と、ぼやきながら橋の数をかぞえました。もちろん景色は素晴らしいので気は紛れましたが、足の痛みは治りません。途中、靴を脱いでみると足の小指と親指の付け根に血豆ができ、用意した傷テープでは間に合いません。白堤のゴールではその血豆が破れてしまいました。

次の観光目的の六和塔(ろくわとう)を眺めた時、折角きたのですから上まで上がりたいと思いました。六和塔は高さが60メートルあり、外見は十三重の塔に見えます。塔の上に行くには階段を使って自分の足で上がるしかなく、お土産店で歩きやすい靴を買い求めました。観光地で靴が販売されていたのは驚きでしたが、大変助かりました。

その靴のお蔭で一番上迄上がることができました。

それ以後、海外旅行だけでなく国内の旅行であっても歩きやすい靴を持っていくようにしています。

そして旅行先の地域を調査し「この対策で十分か」と常に考えることにしています。

「想定されるリスク」は経験があって初めて想定可能であり、価値判断や感覚の相違などは想定できないということがわかりました。全く経験のない国へ行く場合、その国の情報を入手してよく分析しておけば、「想定されるリスク」については対策を準備できると思います。みなさんもさらに想定外をなくすよう想定してみませんか。進行を想像し、予定していない事象をその性質別に識別しましょう。想定することにより、あわてず、騒がず、落ち着いて行動することができます。

 

想定外のことが起こった場合に備えて

「統計的に発生率が高いものからリスクを想定し、その対処法を準備しておくことが重要」と考えられています。

想定できる事象の中で万が一発生したらどう対処するかを想定して、その対応策を検討して準備しておくことがリスクマネジメントです。しかし、その発生する事象を全く予想できない場合は、最初の計画に含めることができません。「想定外」は置かれた状況や環境などによって、様々な事象として発生しますので対応策をなかなか準備できません。

想定できれば、最初からその事象に対する対応案・対応策を準備できますが、全く想定外の事象が発生することがあり、その時にどう対応できるか、どう対応すべきかを考えておく必要があります。ここではリスクを想定し、対策を準備できた時の例をあげます。

3年前の7月に、中国浙江省杭州のソフトウエアパークにある、オフショア開発の委託先に出張した時の出来事です。

出張3日間のうち2日間は仕事のスケジュールをしっかりと決めていました。オフショア開発の委託先に業務仕様を説明することが主な仕事です。テレビ会議ではなかなか伝わらないようなことも、直接会って説明することにより理解が深まります。

また、オフショア開発の担当者の生活や習慣を知ることができ有意義でした。

中国の担当者はTV会議では聞きにくいことや、日本語が堪能でないため質問を遠慮してしまうことでも、自社の会議室であれば割合のびのびと質問できます。

オフショア開発企業のシステムエンジニアとプログラマーは、入社した時から日本語教室で強制的にレッスンを受けていますので、殆どの人は日本語が話せます。

一日目の夜は、現地駐在員主催の歓迎会があり、開発メンバーと会食しました。一層、親密になれたような気がしました。

乾杯の時には、文字通り杯を飲み干して空にしなければなりません。筆者はお酒が飲めないので、杯を逆さにしていましたが、一緒に出張した同僚二人は「カンペイ」「カンペイ」と囃し立てられ、その場の雰囲気にも乗せられ一番強いお酒「白酒(パイチュウ)」を一気に飲み干していました。白酒のアルコール度数はウオッカと同じくらいで60度もあります。それでも一気に飲むと喉をすーっと通るそうです。

同僚が勧められるまま飲むので心配になり、「杯を逆さにしてもう飲まないように」と途中で助言しました。まだ元気なうちに、止めたつもりでした。

現地駐在員から西湖の蓮の花は今最高に見ごろなので、明日早朝見に行った方がいいと勧められました。明らかに飲み過ぎた同僚をホテルの部屋まで送っていき、翌朝は5時半に起床しホテルのロビーで6時に待ち合せることにしました。15分待っても来ない場合は先に行くことを3人の合意事項にしておきました。

翌朝心配した通り6時になっても同僚の一人はホテルのロビーに来ません。電話をかけてみましたが出ません。6時15分になり再度電話をかけてみましたがやはり出なかったのでもう一人の同僚と出かけました。

この場合は15分しか待たないと宣言しておきましたので、15分以上無駄にすることなく散歩を満喫できました。待ち合わせに来なかった同僚は二日酔いのため寝坊したとのことです。

その同僚には申し訳なかったのですが、今までに見たことのない素晴らしい蓮の花を見られました。

「早起きは三文の得」を実感しました。早朝の湖畔には太極拳をやっている人たち、独自の体操をしている人たち、水筆(ペットボトルに水を入れその先に取り付けた筆)でコンクリートの地面に文字を書いている人たち、曲に合わせてダンスをしている人たちがいました。早朝からさまざまな活動をしている人たちをみて、元気をもらいました。

リスクを想定し、それに対応できたのでリスクマネジメントが成功したと思っています。こういう小さなことから、実施してみてはいかがでしょうか。

「より広く リスク押さえな あきまへん」

数年前のことですが、ある展示会に行くことにしていました。運悪く、台風が接近しつつありました。そこで会場までの経路を複数種類検索し、いくつかの到着地点ごとに、電車が止まったらその地点からどのルートで行くとよいかを細かく調べました。予想通り台風が関東近くを通過して、電車が軒並みダイヤ遅れ、運転見合わせとなりましたが、用意周到なリスク対応策の効果があって、朝10時の開場前に無事に展示会場に到着できました。しかし、なんと展示会は午前の開催は中止となっていたのです。会場の受付に確認してみると、展示会に出展している各企業、団体、学校の説明員が到着しないためということでした。個人プロジェクトとしては大失敗でした。台風接近というニュースを聞いてから、個人プロジェクトの目的が会場に到着することになってしまい、展示会を見学して今後の市場動向を調査するという本来の目的から離れてしまっていたのです。すなわち、本来考えるべき展示会が開催されないというリスクが漏れてしまったのです。日頃から、「リスクを考えるように」と言っている者としては情けない出来事でした。

個人プロジェクトにおいて、予めリスクを洗い出してその対応策を考えておくことは大事です。その際に重要なことは個人プロジェクトの本来の目的に照らしてリスクとその対応策を考えることです。まれに本来の目的からはずれたことに注力してしまうことがあります。個人でやっているだけになかなか自分では気づかないものです。そういうときのために、たまには一旦立ち止まって今やっているプロジェクトをふりかえってみましょう。新たな気づきがあるはずです。

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