カテゴリー別アーカイブ: 5 関係者への接し方

遠慮せず 本音で話し 信を得る

仮登録(2023年9月発表資料から)

仕事での話になってしまうが、お客様とのやりとりでは、会社の論理で進めて結果的に後で大変な目にあうことがある。

お客様と本音で今の実態(問題、課題)と今後の見込み(リスクと対応策)といったことをぶつけて話すことも大事。最初は、叱責を受け相手にされないこともあるが、丁寧に説明し、約束を確実に守り、お客様にできるだけ迷惑が掛からないように繰り返していくことで、信頼を得られる。時間は掛かるが。もっとも社内からは批判されることも多い。社内は最後うまく終えれば何も言わなくなる。

といった事例を入れる予定。

「伝わる」は 相手の心 響かせる

もう10年くらい前の話になります。家内が以前所属していた混声合唱団の定期演奏会に聴きに行った時の話です。
演奏会終了後の打ち上げと反省会(最近ではふりかえり会ということが多い)にも参加させてもらいました。最初に振返りと次の演奏会へ向けての意見交換がされました。その後は、さすがに合唱団ですので最後まで合唱の連続でした。その振返りの中で、以下の発言が合唱団のOBからありました。
「今回は、全員が25曲全部を暗譜して歌ったことはすばらしい。残念だったのは、第1部の歌詞が会場にいるとよく聞き取れなかったことである。言葉は『言えばよい』のではなく、相手に『伝える』『伝わる』ことが大事である。相手の心に伝えようとして歌っていたかという点が課題である。出だしであったこともあるかもしれない。第2部、第3部になると本当に会場の人たちの心に伝えるような歌い方になっていただけに、最初の部分が残念である。「言う」でなく「伝える」という点を改めて思い出して、これからも練習を積んでほしい。でも本当に今日は素晴らしい演奏会でした。」
これを聞いて、わたしもつい日頃「言えばよい」となっていないかと思い起こしました。パーソナルプロジェクトであってもステークホルダーの賛同、協力を得ておくことがプロジェクトを進めていく上で大事になります。普段、「言う」だけで終わっていないだろうか。相手の心に届くような伝わる話し方をしているだろうかと改めて考えさせられた1日でした。

©2023 Fumiaki Tanaka All rights reserved.

踏み込んでくるソフトウェア

マメに手紙を書かないのを筆不精といい筆者もその仲間だと思います。Facebookを略しFBと書くことが多いようですが、面白いことに筆不精(FB)でもFacebookには頻繁に投稿する人がたくさんいます。つまり反対に筆マメです。
筆者はLinked-inにずいぶん早くに参加したのですが、返事を放置しているうち何度もパスワードを忘れて設定しなおし、今では忘れたまま放置する有様で、コンタクトされる皆様にご迷惑をかけています。

そういうわけでTwitterやFacebookは避けていましたが、研究室の連絡にFBが使われ始めたため、観念して昨年参加しました。1年経ち、案の定発信は稀となり、受けた友達リクエストも溜っています。老人クラブ化するリスクを感じ、時々若い人に承認やリクエストを送りますが、基本的にやはりFB=筆不精となっています。
そこへソフトウェアの技で来る「知り合いかも」が大体は的中なのに驚きます。ネット広告も同様なのですがCX(UX、顧客体験)へ向けてどんどんパーソナライズされ、まさにマス・カストマイズ時代になってきたと思います。

例えば、結婚式へ祝電を打つと付近の住まいの宣伝などが出るのもそれですが、病院の検索をすれば葬儀場や墓のPRが出るのは明らかに行き過ぎに見えます。こういうのは相手の立場に立っていませんから、決して良いCXにならないでしょう。
そういうソフトウェアにこそ相手に貢献する気持ちが必要と感じます。ミッションやビジョンの定義、目的・目標の構造が必要で、例えば「パーソナルPMのフレームワーク」のような定義を組み込んでしまえばよいと思います。人間で実行がなかなか難しい、そういうことでもソフトウェアなら実現できますから(^-^)。
さて、ここには筆不精の直し方が書ければ良いのですが、いくら懲りてもそれはまだありませんため出てきません。ここで言いたいのは、相手に踏み込むには、相手の立場で考えないといけない点です。それを突き詰めていくと、結局のところ相手の成功や成長に貢献するということです。
その昔いろいろなお客様に恵まれたのですが、現場を担当されていたお客様のたくさんの方々とは今でもお付き合いがあります。あとになってその背景や理由をじっくり考えてみますと、運よく相手個人の成功にも貢献できたケースばかりです。

仕事がうまくいっても個人の成長に貢献できない場合があり、そういうケースではこんな関係にはなりません。皆様の場合はいかがでしょうか?
関係者への接し方の具体的な方策として、企業ではマーケティングの方策が使われますが、個人活動では必ずしもそうはいきません。息の長いステークホルダーへの接し方は、表面的な活動だけですむことはありません。長期間の言動には考え方が顕れるからです。パーソナルPMのフレームワーク中の活動の中では、分り難いためかLLのケースがなかなか出てきにくいですが、最も重要な点だと思います。

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衣替えごとの片づけについて

衣替えの季節ですが、いつも失敗するクローゼットの片づけについてパーソナルPMを利用しようと思います。

片づけが苦手な筆者としては、個人の性格の違いか、男女の違いか、整理してみたいと考え、周囲の人たちに調査しました。一般的に女性の方が買い物好きで、物を捨てられないタイプが多いと感じました。女性は「値段が高かったものについて、特に傷んでもいないものは捨てるのがもったいない」という考えからではないかと思います。一概に男女の違いとは言えないのですが、モノを大切にするため捨てられないというだけでなく、女性は男性より空間整理が苦手だからではないかと推理しました。

最近流行している片づけコンサルタント近藤麻里恵(コンマリ)さんの「人生がときめく片づけの魔法」[1]によると、だれでも片づけができるようになり、一度きれいにすると、リバウンドはしないという内容が書かれていました。

コンマリさんのやり方は、一度に家じゅうのものを集めて全部 “ときめく”か、“ときめかないか”を見極めてときめくものだけを家に残す、というやり方です。筆者には、その時間がとれません。てっとり早く近藤さん(こんまりさん)にお願いしたい気持ちです。

でも我が家のステークホルダーである夫は片づけ上手な一番身近な先生です。きっと、先生を見習えばクローゼットを片づけるという目標を達成できると思います。そして一番喜んでくれると、思います。

夫の片づけについての考え方は単純明快です。「同じ種類のものは同じ場所にしまうこと」、「取り出して使ったら、また元の場所に戻すこと」、「必要以上にものを増やさないこと。つまり新しいものを一つ買ったら、一つ捨てること、二つ買ったら、二つ捨てること」です。確かに、洋服に限らず買ったら捨てる、とすれば、物があふれることは、ないというわけです。理屈はわかるのですが、なかなか実践できず、捨てるのを、あとからにしよう、とか、もう一回使ってから、とか、誰かにあげるのでその時までしばらくだけしまっておこうとか、考えてしまい、やはり片づけが遅れ、失敗しています。

筆者の夫は、衣替えの季節にいつもクローゼットを使いやすいように整理します。夫の領域と筆者の領域は分かれていますので、自分の不要な洋服を整理し、ごみ袋に入れ、捨てておくよう依頼されます。夫の基準は、充分着たと判断したものつまり着古したものや色あせたものを入れ替え時期と判断し、ごみ袋行にします。そして捨てたものと同様の役割を果たすものを補充します。買い物は一緒に行くこともありますが、ほとんど筆者の担当になっています。衣替えの一連の流れは夫にとっては季節の変わり目ごとの通常のタスクですが、筆者には、なかなか大変な作業ですので、パーソナルプロジェクトマネジメントとして取り組むことにします。クローゼットの自分の部分だけですが、この夏、挑戦します。

いつも言い訳にしている「忙しいから」とかは、止めます。

アラン・ラーキンの「時間の波に乗る19の法則」[2] によると、「忙しい人ほど時間がある」と書いてあり、優先順位をつけてA,B,CのAだけについてやるなど、時間を上手に使って、忙しいからという言い訳をするのはやろうとしていないだけだそうです。
改めて私も片づけプロジェクトに、着手することにしました。

LL:洋服を買うときは、どれの代わりにこれを使用するのか、クローゼットのどの場所にこれを配置することになるかを、考えることにしようと思います。まさにパーソナルプログラムマネジメント[3]の中の「ステークホルダーの賛同/好感を得ることができる」はずです。

参考文献

[1]近藤麻理恵著 「人生がときめく片づけの魔法」 サンマーク出版社

[2]アラン・ラーキン著 奥健夫訳 「時間の波にのる19の法則」 サンマーク出版社

[3]パーソナルPM研究会/冨永章編著 「パーソナルプロジェクトマネジメント」 日経BP社

 

個人プロジェクトのステークホルダーは特別に大事

現在、我が家は自治会の輪番制の理事、つまり隣組の班長です。この辺りでは班長の仕事は主婦が行いますが、我が家も同じです。集金、資料配布、回覧、打合せ等で、班内の6戸が1年交代で担当し、近所のアパート2つを含む16戸の区域のお世話をするルールになっています。ただ、アパートには階段があったり集金が難しかったりで、何かと手間がかかるようです。

ゴミ置場の世話は一番大変なので同じ6戸で週単位の当番制です。生ごみの日は満杯となり車が通りにくいほどです。前はノラ猫が興味深そうに遊びにきては宝さがしをしていましたが今は生ゴミには全く興味が無いようです。代ってカラスが荒らすようになり始末に負えませんでしたが、幸い旨い食事が他にあるらしく前ほどは荒らされなくなり皆でほっとしていました。

ところが先日、近所に3階建7戸のアパートが突然出現しました。建設が終りシートが外され初めてそれと分りました。梯子状の階段が巡らされたデザイナーズ・マンションとのフレコミです。なるほどそうみると確かに恰好がいいし、階段がジャングルジムのようで若者向きに見えます。しかし各戸へは全部別々の階段上のドアまで行かないとポストがありません。専用ゴミ置き場もなく満杯の置場に相乗りをされそうでこれはたいへん!

何が建設されるのか掲示されず近所の誰も知りませんでした。アワを食った班長、つまり家内が皆と相談した結果、6戸で団結し自治会へ要望を出すことになりました。「新7戸は自治会別班を作り、ゴミ置き場は専用を用意してほしい」と。情報を遮断されていたステークホルダーの反応は一般的にこうなるわけでしょう。専用ゴミ置き場は作られましたが、他の要望は班長交代後も続けられました。最終的に回覧物置き場が1階に設けられ、集金はず少し遠いですがその大家1軒に行けばよくなりました。しかし後味のよいことではありません。

さて話は変わりますが、パーソナルプロジェクトで関係者の賛同が大事な点は同じことでしょう。例えばビジネスマンが人生の大目的を思い立ち、熱心に取り組み始めたとします。勉強時間は夜なので、家族の団欒を早めに切り上げ部屋にこもり目的へと邁進しようとしますが、なかなかそうはいきません。

最重要ステークホルダーである配偶者をつんぼ桟敷にすると問題が起きます。事前に目的が共有されある程度の賛同が得られた場合には、問題はしばらく出ないでしょう。二人で行うプロジェクトは終盤まで大丈夫でしょう。とにかく、成功するにはステークホルダーの協力が欠かせません。個人の場合、関係者はいつもほぼ同じなのでとくに重要だと思います。

パーソナルPMでのステークホルダー・マネジメントのサイクルは、たいていの場合次のような図で表せると思います(見えにくい時は図をクリックしてください)。

Stakeholder Management

もちろん関係者を識別(特定)し「パワー/インタレスト・グリッド」(横軸を関心の強さ、縦軸を影響力の強さとする平面)で位置付けをし、どうマネジメントするか考えるなどのやり方は、組織のPMの場合と同じです。その次に、自分の掲げる目的が相手の視点ではどんな価値があるか、と考えを巡らせるわけです。

小さな成果を得た時に相手とそれを共有することは何よりも大事だと思います。プログラム中の次のプロジェクトへの支援がより強力になります。協力者自身がやり遂げたという達成感を少しでももってもらえば、さらによい支援が得られる点は次の名言に通じることだと感じますがどうでしょうか。

参考: 悠兮其貴言、功成事遂、百姓皆謂我自然 = 悠としてその言をおもくすれば、功成り事を遂げ、百姓の皆我らが自ら然りと謂わん = 成功した際、相手が自分が参画したからこそ達成できたと思うようにする = When the objective is achieved, his members will say: we did it ourselves. (老子道徳経第17章)

 © 2015 Akira Tominaga. All rights reserved.

 

 

行ってまいります

あなたのご家族は、外出する人と送る人がどんな挨拶を交わしていますか。
「東京物語」を筆頭に、小津安二郎の映画を何本か連続して観て、日本語の会話の美しさに感じ入ったことがあります。大女優・原節子が出演しており、そこでは、外出する人は「行ってまいります」と言い、送る人は「いってらっしゃい」と言っています。さらに、佐田啓二・岸恵子の「君の名は」と、音羽信子の「原爆の子」も観ました。どちらでも出かける人は「行ってまいります」か「行ってきます」と言っています。ここに挙げた映画は、どれも白黒映画です。
思い返すと、私たちは小学校に入学したとき、登校時には「行ってまいります」と挨拶するように教わり、そのとおりにしていました。
10年ほど前、次男が中学生のとき、ある朝、登校前に玄関先で家内と何か話しています。放課後の予定の相談をしていたようです。会話が一段落すると、彼は母親に「じゃあね」と挨拶し、自転車に飛び乗って学校に向かいました。
これは見捨ててはおけません。私は自宅の窓から大声で次男を呼び戻しました。彼は30メートルばかり進んでいましたが、素直にとって返してきました。ここで断固たる姿勢を示さないと父親の沽券にかかわります。私ははっきり言い渡しました。
「子どもが学校に出かけるとき親にする挨拶が『じゃあね』とはけしからん。ちゃんと、『行ってまいります』か『行ってきます』と言え」
次男は神妙に聞いていました。しかし、しまった。彼の目が笑っていいます。私の説教が終わるやいなや、次男は「わかった、じゃあね」と言い残し、自転車に飛び乗って学校に向かったのでした。
教訓(3択)
① 白黒映画を観るのはやめましょう。
② 自転車に乗った人を呼び止めてはいけません。
③ 人にアドバイスをするときは、くれぐれも慎重にしましょう。

“許さなくても赦す”努力を続けたい

結婚され、ご家庭をお持ちの多くの方が体験されていることではないかと思いますが、「性格も育った環境も違う二人が一緒に暮らす」行為には、大きな困難が伴うと思います。結婚前、お付き合いしている間は適度な間合いが保たれていたため、お互いの違いはある種の刺激として、良いものにさえ感じられていたのですが、いざ一緒に住んでみると、それは我慢のならない違和感へと容易に変わり得るのではないかと感じます。そして、その違和感を克服し、相手の考えや立場を理解することは、間合いが近く、利害をシェアしていればしているほど難しいのではないでしょうか。

私もその例外ではありませんでした・・・

結婚してしばらくして、妻に対して何か不満に思うことが起きる度に、それはどういう事象であったのか、メモを取るようになっていたのです。「一つの大きい出来事に対してどのようなスタンスを取るか」ということ以上に、小さな違和感が日々、幾千、幾万と堆積していくことに恐怖を感じました。積み上がった違和感によって、「一つひとつの理由は思い出せないのだけれど、何だか知らないが我慢できない」という精神状態にもし陥ってしまったら、その感情が生じた理由さえ覚えていないわけですから、「理由となっている事象を解決することで、それに伴う感情をも消失させる」という手立てすら取れなくなるからです。メモを取り、何があったのかをいつでも確認できるようにすることで、そういった手立てを取れるようになるのではないか、と想像していました。

しかし、そのメモはあっという間に数十ページにもなっていきました・・・

「違和感の理由となっている事象の全てを解決することなどできるわけがない」ことに、私は気付いていませんでした。

そんな中、ある人が私に、「何回、赦しているか勘定している間は、あなたは決してその人を赦してはいないのだ」という言葉を教えてくれました。この言葉を聞いて、“許す”と“赦す”との違いを思いました。たとえ“許す(admit)”ことができなくても、“赦す(forgive)”ことはできるのではないか、と・・・そして、私が一所懸命に取っていたメモは、実は赦していない回数を勘定するためだけの代物ではないか、と・・・

そこからは一切メモを取ることを止め、何か違和感や不満を覚える都度、“許さなくても赦す”という決意を思い起こすことで、感情を消し去る努力を始めました。最初は感情が消えるまで数日かかることもありましたが、何度も訓練するにつれて、数時間、数分、場合によっては数秒と、感情が持続する時間は短くなっていきました。

またこの訓練は、「相手も私に対して、同じように違和感や不満を覚えていたのだ」という、ごく当たり前のことを気付く契機にもなりました。私がメモを取っていた数十ページの事象に対して、逆に妻は、「なぜこんなことでこの人は怒っているのだろう」という違和感を覚えていたに違いない、と・・・

家族は、一番間合いが近く、かつ利害を最も深くシェアしているステークホルダーではありますが、会社の上司や同僚、部下も、それに準じて強い関わりを持っている関係者と思います。家庭だけではなく、ビジネスの現場であっても、“許さなくても赦す”マインドセットを根本に持つことは、そしてそれが社風として文化として存在することは、より良いステークホルダー・マネジメントの前提条件なのかもしれない、と感じています。

© 2015 Masao Kawasaki, All rights reserved.

「関係者 時(とき)が経てば 変化する」

パーソナルプロジェクトマネジメントを実践している友人にK氏がいます。先日K氏と食事をしたときにK氏は「個人プロジェクトでもステークホルダー・マネジメントは大事だね。つくづく今回は感じたよ」と以下のような話を語り始めました。

K氏は学生時代にクラス委員をしていました。卒業してから随分と時間も経つので、同級生のみんなはいい歳になったし、ずっとやっていなかった同窓会を先生が存命中にやろうと音信がとれている仲間に声をかけました。最初は少人数でこじんまりやろうと計画を進めていました。しかし、連絡が取れてだんだんと人数が増えて来るにしたがって、いろいろな人がいろいろな意見を出すようになり同窓会のプログラムがなかなかまとまらなくなってきました。さらにどうせやるなら他のクラスと合同でやろうという意見まで出て、当初の構想とは違って大がかりな学年全体の同窓会を開催することになりました。実はK氏は途中でリーダ役を降りたそうです。途中から規模が大きくなり打合せの頻度も増えて、K氏自身が地元に住んでいないこともあり、なかなか参加できなくなったからでした。途中から参加した、地元の有力者となっている別のクラスの同期に引き継いだということです。最終的に盛大な同窓会が開かれ、出席者はお互いの元気な姿で再会でき、なつかしい話をして大いに盛り上がり満足したようでした。しかし、K氏は自分の描いていたこじんまりではあるが、卒業時のクラス仲間と密なやりとりができる同窓会を考えていたので、物足りなさを感じたということです。

同窓会プロジェクトを開始して時間が経つにつれて、いろいろな関係者(ステークホルダー)が関与してきて、いろいろな意見が出てくる。それに対してどう対処していくか、ほとんど考えていなかったので、あれよあれよという間に話が変わっていってしまったとK氏はぼやいていました。

関係者(ステークホルダー)は時間とともに変化します。個人プロジェクトの当初は関係者でなかった人が途中から影響度の大きい関係者として登場してきたり、逆に当初は影響度の大きい関係者であった人が、時間とともに関係が薄れて影響度がほとんどなくなってしまったり、ということがあります。

ですから、個人プロジェクトと言っても、自分のプロジェクトに影響力のある関係者は誰かということを時々識別しておく必要があります。それを怠ったばかりに個人プロジェクトが進まなくなってしまうこともあります。また、関係者の期待自体が変化する場合があります。関係者の識別に加えて、その期待内容を確認しつつプロジェクトをすすめていきましょう。

(c)2015 Fumiaki Tanaka All rights reserved.

 

お客様のトップと良い関係を作るには借りを作る?

プロジェクトリーダーのメンタリングを行う機会が時々あります。そこではPM(プロジェクトマネジメント)の知恵に加え、スポンサーとの良い関係をどう作るかについて、自分のLL(Lessons Learned)を持ち出して参加者に考えてもらうことが多くなりました。過去にお客様と接する第一線の仕事を長年やっていましたので、そこでいろんな知恵をいただき、自分なりに咀嚼してきましたが人に披露するような機会はあまりないものでした。

ところが複数の大学院でPMを教えるようになると、ステークホルダー・マネジメントの経験談をたくさん聞きたいというフィードバックが多いのに気付きました。そこでそういう知恵をネタにいれることがだんだん増えて来ました。もちろんやりすぎると、「年寄りの自慢話」として嫌われることは間違いないですから、ほどほどにはしています。そういう中から「顧客へのペネトレーション」、とくにお客様の上層部をどうやって味方につけるかという点のLessons Learnedです。

SE時代に色んなお客様のシステム構築プロジェクトをやっていました。相当昔ですし地方でしたから、SEは珍しいしお客様チームの中のリーダー的存在でした。しかし、一介の若僧の言うことが、お客様の中の関連部門長などに簡単に受け入れてもらえるわけではありません。もし聞いてもらえないとプロジェクトが失敗するというような場面も何度も起きます。そこで、お客様のキーマンやトップを味方につける必要がどうしてもあったものです。

そしてお客様トップとの定期的会合をどこでもお願いするようになりました。そんな機会で某社にお伺いしたある日のこと、K社長が「今日は相談があるのでお酒でも」とのこと。社長車でフグ料理屋につれていかれました。地元の名士ですから料理屋のご主人の対応はこの上なく丁寧です。トイレをお借りしご主人に「大ごちそうになりどうしたものか」と聞いたら、即座に耳打ちしてくれました。「お客さんは若いのだから偉い人には素直にごちそうになるもので、決して払ってはいけません。借りを返すような良いお仕事をしてください」。

そう言われて気付きました。当然ながら20代の若僧がお支払できるようなお店ではありません。借りを作ったのですが、K社長には「貸しは仕事で返してくれる相手だろう」という期待があるのです。期待に応えられるように頑張っていると、その後K社長に奢られる機会はどんどん増えました。それにしたがって、組織では自然な現象ですが、お客様の上層部の方々の多くが私の意見に従ってくれるようになったのです。

このことは他のお客様でも同じです。社長に限らずお客様の目上の方と接する場合には、そのような借りを作ることです。地方赴任から戻り大企業を担当した際でも同じことが起きました。この原理は、時代を経ても他の国であっても同じだと思います。割り勘などしてはいけません。若い人たちにこれを得意になって話したその夜のこと、私はすっかり奢らされてしまいました。