カテゴリー別アーカイブ: 3 リスクの予見と対応

胸騒ぎ リスクの予兆 すぐ動け

仮登録(2023年9月発表資料から)

いつもと違う風景から感じる違和感。違和感からリスクを感じる事例を紹介。

駅に向かう途中の風景がいつもと違う。人の流れが違う。 いつもと違う方向に歩いている人が多い気がする。 その方向には何があるのか? そうそちらには別の会社の路線の駅がある。 普段は使う人がそれほど多くない路線。4両編成の路線。わたしがいつも使う鉄道路線は10両編成。 もしかして、電車が止まっているのでは? もしそうなら、取る手段は何と何か。 それぞれの場合にどういった行動が必要か、、、などなど考えて行動した事例を紹介。 すぐに動くことの大切さ。といったことを記載予定。

超高齢社会の下準備(ある日妻の介護が必要になりました)

表題
『超高齢社会の下準備(ある日妻の介護が必要になりました)』
副題
『介護とは いずれ我が身 もうすぐ我が身』
皆様へ,
私たちは,令和5年11月4日に,健康管理士会交流サロン主催のパネルディスカッションにおいて介護の問題に焦点を当てました.杉並区で介護経験が豊富な参加者が集まり,お互いに介護に関する情報交換や,介護予防の啓発活動を推進している杉並介護者応援団の北原理事長による基調講演をお願いしました.さらに,パネラーの中川さんからは介護体験について具体的な事例をお話ししてもらって参加者全員で情報共有しました.
ファシリテータの岩石さんからの発言をご紹介します.
私たちはいま,超高齢社会を迎えており,誰もが介護者または介護を受ける立場になる可能性があります.介護保険を賢く利用することで,助けを求めることができる時代となりました.どれだけ努力しても不満が残ることもありますが,できることを無理せず行うことが,介護の基本です.まず,自分がどう生きるかを考え,介護をどう受けるか,どう提供するかを考えることが大切です.
この機会に,超高齢社会に向けた備えを共に考え,助け合いの精神で支え合いましょう.
なお,詳細については下記URLを参照ください.
レポート参照先「第2回健康管理士会交流サロン活動報告会レポート」

逃げ道を いつも忘れず 用意せよ

入社してから9年目の30歳。ある程度の業務を任され脂が乗っている時期のこと。
お客様との打合せ資料も出来上がり2年目の若手と富山まで出張を予定していました。 2-3日前から背中に針を刺すような痛みがあったが、我慢して仕事をしていました。 出張の朝、家内に背中を見てもらったら大きな水ぶくれが出来ていましたが、お客様との打合せを延期するわけにもいかず、2年目の若手では説明が無理なため、背中にガーゼと絆創膏で水ぶくれを覆ってもらって出張に出かけました。 激痛が時々あるものの我慢していましたが、満員電車の中でどうやら水ぶくれがつぶれたような感覚が背中に伝わりました。それでもなんとか飛行機に乗って富山まで行ってお客様との打合せを激痛に耐えつつ、なんとか初日を終えてホテルへ戻りました。
背中のガーゼを外して、新しいガーゼになんとか貼り換えました。手が届きにくい背中なのでかなり適当な貼り方ではありましたが、ひとまず完了。しかし、とても背中を下にして寝ることは痛みもあってできないので、うつ伏せになって寝ました。
2日目の打合せを終えて東京へ戻り、翌日は休暇を取って病院へ行きました。
医者からは開口一番。
「何を考えているのか。 入院ものだよ。 これで出張に出かけたのか。(あほか)」
(注:さすがに「あほか」とは言いませんでしたが、顔にはそう書いていました)
帯状疱疹でした。
早い治療をしていなかったために、背中のあざが消えるのに10年近くかかりました。
脂が乗っていたこともあり、全部自分でやろうという意識が強く、自分に何かあった場合のことは一切考えていませんでした。 2年目とは言え若手にも代理できるようにいろいろと考えておくべきでした。
最悪のケースを考えて、自分がダメな場合でも対応できるような逃げ道を用意しておくことが大事だと痛切に感じた出来事でした。
©2023 Fumiaki Tanaka All rights reserved.

料理ができる男

ある時私はミシュラン三ツ星シェフの記事を読みました。理路整然とした 素晴らしい仕事ぶり、料理をする姿がカッコいい!以前から料理する男の姿に憧れはありましたが、”いや~無理です。できるわけないです。あなたITの人間でしょ?”などと自己批判し諦めていました。しかし、レシピがあれば一般の方でも料理はできますと言うコメントに乗せられてついに料理をすることを決意します。

俺料理できるんだぜ?なんて言えたらカッコいいな、と想像しつつまずは道具を揃えましょう。三ツ星シェフは道具にこだわります。その気になっている私は数万円の鍋や包丁を揃え、シェフのレシピ本も手に入れて、いざ料理するぞ!と意気込み、材料を調達しようとしたところ…トリュフに金目鯛に…あれ?…トリュフ?いくらするの?どこで売ってるの?金目鯛?魚さばけないけど………あぁ面倒くさい。そうして三ツ星シェフに憧れた私は包丁を握る前に挫折したのでした。

★★教訓1★★
その道のトップの話を見る聞くと一時的にできそうな感覚に陥る。そしてそれはただの妄想である。

数年後…イケメンアイドルがカッコよく料理するを姿をテレビで見ます。料理ができる男性はカッコいい!またもや料理ができる男に憧れた私は料理することを決意します。しかし、前回の教訓はいかさないと。トップレベルの料理は作れそうにないことはわかっているので今回は”男のための簡単料理本”を購入です。うん!これなら自分のレベルに合っていてできそうだぞ。その中からスペイン風オムレツを選択。なんか名前がカッコいいし、今まで食べたことないし、材料も玉子に野菜にお肉と近くのスーパーで手に入るぞ。

いざ調理を開始。調理器具は無駄に高価なモノがそろっています。下ごしらえも順調。そしてフライパンに材料を投入!野菜が結構余りそうだから多目に入れようかな。野菜好きだし、いい料理人は材料を使い切るって聞いたことがあるぞ。そしてオムレツのための玉子を投入!すると……あれ?!?!?玉子で閉じれない!!え?もしかして…野菜が多すぎて玉子で閉じることができないっ!!!その間にもどんどん玉子は固まっていきます。そして最終的にできたモノは…肉野菜炒めスクランブルエッグ。

★★教訓2★★
レシピは守れ。最初からアレンジするな。

数ヶ月後…料理の鉄人が麻婆豆腐を作っているのを目撃します。麻婆豆腐は何度か食べたことがあるし、そもそも簡単に調理できるレトルトっぽいのを見たことがあるぞ。前回の教訓をいかせ!最初はこれでいいじゃないか!豆腐にネギに簡単調理のソースを購入。レシピ通りにできた!見た目も抜群!いざ食してみると…あれ?そう言えば私は豆腐があまり好きじゃなかった…

★★教訓3★★
目標にとらわれて目的を見失うな。自分の価値感も大事にね。

数日後…誰にでもできると言われている究極の素人料理カレーライス。もうこうなったらこれしかありません。カレーは子供の頃から大好きです。器具がある、レシピがある、材料はぶつ切りするだけ、調理は材料と市販のカレールーを鍋に投入して待つだけ。。。できた。。。。そして口に入れると~美味い! でも…あれ?そういえばカレーって学生の頃散々作ってたっけ…

★★教訓4★★
自分の能力を覚えておけ!

その後…
 
今でも対外的に料理ができますとは言えません。イケメンアイドルが作るようなオシャレな料理もできません。しかし、レシピと材料があれば大抵の料理はできます。というよりもレシピと材料を見れば”自分が作れるかどうか”の判断がつきますし、どうしても作れるようになりたい場合は何回か練習すればできるだろうなとの予測が立てられます。そして何よりも料理する事自体が好きになりました。

★★最終的な教訓★★

何度失敗しても立ち上がって行動・改善すればある程度できるようになるし、新たな価値が生まれる。重要なのは動き出すこと。

振り返ると無駄な事してるなぁとも思えますが、現在の能力を考えると上記4つの失敗は本質的な失敗ではなかったと思います。できるようになるために必要な過程でした。行動したことが重要であって始める前から批判したり諦めたりするのが最も愚かなことだと。妄想だっていいじゃない!行動するきっかけになれば。最初に妄想したような”人に振る舞える料理が作れる”ようになったわけでもないですし、人に自慢することもありません。しかし、何もしない頃と比べれば能力向上は明らかですし個人的には満足しています。
 

★★簡単な分析と自分へのアドバイス★★

1回の行動につき複数の過ちを犯していますが、主な種類は大きく以下の4つです
◯自分の現状(レベルや能力種)を把握していない
◯先人の知恵に従っていない
◯目的と目標が明確になっていない
◯権威に惑わされて自分の価値感を忘れている
 
これらを踏まえて過去と未来の自分にアドバイスするとしたらどうでしょうか?
まず、格好つけたいのか、料理ができるようになりたいのかを明確にする。前者ならば、それは本当に料理で表現する必要があるのか?もしかしたらファッションでもよいのではないか?後者であれば、次に自分のレベルにあった料理を選択する。そして、本来の自分の価値観を確認し料理を選択する。これで少しは近道できそうです。

現状はabiltにより抽象化された能力習得法があるので始める前から諦めることはありません。自分の能力を形式化し、その能力を習得するまでの行動も構造化され記録されています。したがって忘れても、今後似たような能力が必要になったらそれを参照し思い出し、新しい能力習得に活かすことができます。またPPMの手法により習得までの期間を短縮したりスケジュールも管理できるでしょう。最初の行動まではいくつかの心理的要因によりますが、いざ行動を開始したらPPMやabiltのような手法を用いることで効率化できますし、心理的にもモチベーションがあがったり、楽しんだりできます。先人の知恵やテクノロジーをお借りできる毎日に感謝です。

大地震への備えは頭で考えるだけでも有益

2011年の東日本大震災は未だに影響が去らないほど大きかったと思います。得た色々な教訓は、前向きに生かしたいものです。

その時某学会の研究大会が文京区の大学であり、筆者は発表寸前で座席でちょうどノートPCを用意していた時でした。揺れに驚きそのPCで調べて大地震とわかりました。妻の実家がある地域への津波の予報がありましたが、親せきが多く心配でした。電話はもちろん通じません。部屋の出席者多数に状況を伝え、筆者は発表をやめてすぐ退出することにしました。まもなく大会の事務局からも連絡が入り、全員が階段を歩いて建物を出ました。周囲の人たちに伝えてすぐに会場を後にしました。

そこからが肝心の話です。まず近くの電気屋でラジオを買い、自転車屋の場所を尋ねました。そのラジオで交通情報を聴きながら、滝野川の自転車屋へと急ぎました。1度使うだけの一番安い自転車を買い、前籠をつけてもらいながら店員にも足を確保したほうが良いと伝えたら、皆さんキョトンとしていました。後日のニュースではその後2時間で都内の自転車が売り切れたようでした。

ふだん持ち歩いている小さな方位磁石を頼りに、自転車で住まいの浦和へと向かいました。途中のコンビニで、念のために電池とパンなどを求め籠に満載して走りました。スマホなら方位も分かり情報も多くとれますが、そういうときは電池はなるべく節約するとよいと思います。途中の牛丼屋が営業していたので、念のために夕食をとりました。交通渋滞と歩道上の雑踏で意外にスピードが出ず、20キロほどを合計4時間かかって帰宅しました。

テレビやインターネットが津波の様子を伝えていました。妻の実家が津波で全壊したのを知るのにも、助かった義母を迎えに行くのにも、その後だいぶ日にちがかかりましたが、ここでは割愛します。使った自転車には滝野川警察署の鑑札がついています。

自転車の鑑札

今もある不要な1台ですが、番犬の代り(?)となっています。津波で失った妻の実家跡の地域にはまだ手がついていませんし、義母は現在は設備のよい介護施設を避難先としており戻れません。とはいえ、嫌な思い出は忘れて、爪痕は教訓としてだけ頭に残したいものです。

実は、その昔東北へ赴任していた時代に宮城県沖地震に遭遇しました。いつもの出張中ではなく珍しく仙台のオフィスにいました。激しい揺れに思わず壁に背中をつけて立ち上がりましたが、多くの社員は日頃のガイドのとおり、冷静に机の下に伏せていました。しかし、揺れで机が勝手に動いて行ってしまうとは誰も考えていませんでしたし、椅子が移動して外に面するガラスに当たりそうで危険でした。

電話は不通となり、交通はすぐ渋滞しました。お客様の状況は非常用電源のあるテレックスや無線などで段々とわかりました。そのうち日没で暗くなり、筆者は8キロ程を歩いて帰宅しました。途中パン屋に寄ると売り切れのため食パンの耳を無料で分けてくれ、電気屋では電池は売り切れのため使いかけの電池を無料でくれたのに感激しました。近所に倒壊した家もありましたが、住まいの借家は外見は無事。しかし案の定、家の中は戸棚や冷蔵庫まで倒れ、ガラス片だらけで惨憺たる状態の暗闇でした。妻や幼い子達のケガがないのが幸いでした。ライフラインが止まり数日間は食料も売り切れ、もらった電池も2日で全て切れました。東京から車でかけつけた社員の食料や非常用ライトなどの救援物資がとても有難かったものです。

そのときの教訓で、地震の際にやるべきことが頭にしみつき、迷わずに行動できたものです。「備え」とはいえ、実際は頭の中だけでの備えにすぎません。それでも、その有無で結果に大きな違いがでます。パーソナルプロジェクトであれ、何事であれ、個人にとって「頭で進行を考えておく」ということが、日ごろからの重要なリスクマネジメントの知恵であり、災害への備えであると思います。もっと厳しい災害がいつなんどき起きるかわかりません。

大災害に備え、リスクや危機への備えを今一度頭の中でシミュレーションし、いざという時の行動を確かめ、腹を据えるのが良いと思います。(2016年10月29日)

©2016 Akira Tominaga. All rights reserved.

健康におけるインシデントマネジメントの事例

会社勤めをしている自分にとって、毎年欠かさず受けているのが、定期健康診断です。検診後1か月たって、結果が通知されます。以前は結果を確認して、体重がどのくらい増えたとか血圧が少し高いということだけで、特にアクションを起こすようなことはありませんでした。

検診結果について、以前、産業医から説明を受けたことがあり、このまま放置すると内蔵肥満に起因する動脈硬化から、重大な疾患が発生する確率が大幅に高くなるというお話を聞く機会がありました。
そのことで定期健診のデータをインシデントと考え、大事故(大きな病気)の予防と考え行動する決意しました。自身の場合は血圧が高いことで、いろいろな取組みをしました。

どれがもっとも効果的かというはっきりとしたことは言えませんが、自身が取り組んでいることを列挙します。体重は減らす方がよいということと、塩分の摂取量が多いので①接種カロリーを考慮し脂っこい料理は避けること。ただし、ですから年末年始含めた長期休暇等はどうしても気がゆるむことあり、1kgから2kg増えることが常でした。休暇明けは、特に気を付けて調整するようにしています。②調味量は、塩分が少ないものの代替えできないかと考え例えば揚げ物等にソースの代りにゆず等をかける。③夕食後の40分程度のウォーキングを行う。(自宅付近のウォーキングコース、自身が設定したもの) ④塩分摂取が高い自身にとって、カリウムを多く含んだ食品である発酵食品(納豆)や乳製品(ヨーグルト)を毎日かかさず摂取する。⑤血圧測定を3日に1回程度は、決められた時刻に実施する。⑥体重は週に1回程度測定することを行いました。

以前、中学の同窓会で友人の医者に聞いたところ、酒は飲めればいくら飲んでもよいが、血圧の値は、低く抑えたほうがよいとのことです。その医者は、血圧が高めで、以前から降圧剤を飲んでいるとのことでしたが、自分は降圧剤を飲むほどではないと言われました。
アルコールについては、自身はコップ一杯程度で赤くなるタイプで、数年前会社の忘年会で、料理の用意できる前にビールだけ飲んで、体内のアルコール濃度が高くなり、意識失うような状態となることがありました。それ以来、控えるようにしており、付き合いで飲まなければならない雰囲気の場合でも最初に一杯だけにして、2杯目め以降はソフトドリンクを飲むようにしています。

以上、述べましたが、血圧対策としてどれがベストとは言い切れませんが、どれひとつ欠いてもいけないと思っています。これからも地道な取り組みをして大事故(大きな病気)の未然防止に取り組んでいきたいと思っています。

© 2016Mitsuhiko Tokunaga, All rights reserved.

放置した 小さいリスク 喉の骨

今年の夏、娘と甥を連れて、米国の友人宅にホームステイさせてもらうことになり、まずはアクションアイテムを洗い出すことにしました。

・航空券の予約

・航空券代金の調達と支払

・パスポート取得

・ESTA申請

・海外旅行傷害保険加入

・・・

まずは何をさておき「航空券の予約」です。これだけは出発の約3ヶ月前から動き始め、望んでいた日取りのフライトをそれなりの価格で押さえることができました。

その時に追加したアクションアイテムの一つに、「国際線での座席確認」がありました。提携便としての予約、かつ航空会社の業務時間外だったことから、その場で座席を確認できなかったのです。子どもたちにとっては物心ついてから初めての海外でもあり、「できれば窓側3席並び」「もしダメなら真中で良いので通路に面した3席並び」という希望を旅行代理店の担当者に伝えました。先方からは「平日昼間に座席確認して、また連絡します」という話でした。

それから私は、航空券代金を支払うための資金調達や、パスポート取得のための手続きに入っていきました。「これを外すと行けなくなってしまう」リスクへの対処を優先すべきだと考えたからです。

それらの目途がついてからしばらくして、はたと「そういえば、国際線の座席について、全然、連絡が来ないなぁ」と気付きました。代理店に連絡すると「確認するのでお待ち下さい」とのこと、その後の電話で「行きは、”xxF”が1席と”yyE”、”yyF”の2席になります」と言われました。

「3席並びにできなかったんですね」ということでその場は一旦、電話を切りましたが、“E”とか”F”とかいう番号に不安を感じ、座席表を調べてみると、真中エリアの更に真中という「外の景色も見られず、トイレに行く時は必ず通路側の乗客に『すみません』と声をかけなくてはならない、最悪の中でも最悪」の席であることが分かりました。その後、代理店にクレームの電話を入れると、先方も手配漏れであったことを認め、平謝り、かつ「キャンセルが出て座席を変更できないか、定期的にチェックして報告します」との約束となりました・・・

いくら謝られても、キャンセルが出なければ、他の乗客をどかすわけにはいかないですから、この席のまま、10時間以上ものフライトに耐えなくてはいけません。そのことを考えると、楽しいはずの旅行なのに、喉に一本、魚の骨がささったような気分になりました。「せめて一本、電話を入れて、座席を確認しておけば良かった」と思いましたが、こうなったら後の祭りです・・・

このことで唯一、良かったことは、“私の油断への戒め”ではなかったかと思っています。リスクの軽重はTo Doの優先度付けに影響する最大の要因と思いますが、大きいリスクだけを考えて物事をシリアルに処理してはいけない、たとえリスクは小さくても最低限必要なことは併行して処理すべきだと、心底、感じました。「行けない」リスクに対処した後、少し安心して滞ってしまっていた準備作業に、これから精力的に取り組もうと思える契機になりました。

© 2015 Masao Kawasaki, All rights reserved.

あわてず、騒がず、落ち着いて

初めて中国へ行った時、民族間の感覚の違いを経験しました。

海外旅行におけるリスク対応策として、「生水を飲まない」、「旅行先の気温を調べその季節の平均気温の高め低めを調節できる上着を持っていく」、「夜間の一人歩きはしない」ようにしています。食べ物が口に合わず、腹痛を起こした場合の頓服や頭痛・腰痛のための鎮痛剤、そして靴擦れのための傷テープを持っていくことも筆者のリスク対応策です。

これらが海外旅行の時の心得でもあり、想定されるリスクの予防策だと信じていました。ところが数年前に初めて中国へ行った時、予想を裏切られることが起こってしまいました。筆者の想定が甘かったのです。

漠然と中国の歴史や文化を学んだつもりであっても、その国土の広さの違いから距離に対する感覚が違うことを全く認識していませんでした。

中国という広大な国土の中で育った人と、日本のように車で1,2時間移動すれば、山が見えたり海が見えたりする狭い国土に育った人では、生活する上で距離感と時間感覚が異なってくるようです。

浙江省杭州市を観光したときのことです。杭州市の西側にある世界遺産「西湖」を遊覧船に乗って湖を周りました。「西湖」は山梨県の河口湖ほどの大きさの人造湖です。遊覧船を降りた後、案内役のSさんから「ちょっと西湖のほとりを歩きましょうか」と言われ、西湖の蘇堤を案内していただきました。その「ちょっと・・・」というあいまいな表現が筆者とSさんとの間で受けとめ方に違いがあったのです。

筆者の中で「ちょっと・・・」はブラブラ歩き、5,6分の散歩という認識でした。歩き始めて5,6分経った頃、「あのう、まだですか?」とたずねました。Sさんはそんな筆者にあきれて「まだ1つ目の橋を越えたばかりですからあと5つの橋を渡りますよ」と笑いながら答えます。

あとから知ったのですが、白堤と呼ばれる蘇堤には6つの橋がかかっており全長2.8kmの道になっているそうです。この6つの橋は錦帯橋と言われる美しい円弧の橋で、岩国市の錦帯橋はこれを模倣したそうです。

この数字だけを耳にすると「たった2.8kmか」と思われると思いますが、スニーカーではなくパンプスで30~40分歩くのはちょっと大変でした。先に聞いていれば次の目的地への移動は遠回りをしてもバスを使ったと思います。

心の中で「6つの橋なんて聞いていないのに」と、ぼやきながら橋の数をかぞえました。もちろん景色は素晴らしいので気は紛れましたが、足の痛みは治りません。途中、靴を脱いでみると足の小指と親指の付け根に血豆ができ、用意した傷テープでは間に合いません。白堤のゴールではその血豆が破れてしまいました。

次の観光目的の六和塔(ろくわとう)を眺めた時、折角きたのですから上まで上がりたいと思いました。六和塔は高さが60メートルあり、外見は十三重の塔に見えます。塔の上に行くには階段を使って自分の足で上がるしかなく、お土産店で歩きやすい靴を買い求めました。観光地で靴が販売されていたのは驚きでしたが、大変助かりました。

その靴のお蔭で一番上迄上がることができました。

それ以後、海外旅行だけでなく国内の旅行であっても歩きやすい靴を持っていくようにしています。

そして旅行先の地域を調査し「この対策で十分か」と常に考えることにしています。

「想定されるリスク」は経験があって初めて想定可能であり、価値判断や感覚の相違などは想定できないということがわかりました。全く経験のない国へ行く場合、その国の情報を入手してよく分析しておけば、「想定されるリスク」については対策を準備できると思います。みなさんもさらに想定外をなくすよう想定してみませんか。進行を想像し、予定していない事象をその性質別に識別しましょう。想定することにより、あわてず、騒がず、落ち着いて行動することができます。

 

想定外のことが起こった場合に備えて

「統計的に発生率が高いものからリスクを想定し、その対処法を準備しておくことが重要」と考えられています。

想定できる事象の中で万が一発生したらどう対処するかを想定して、その対応策を検討して準備しておくことがリスクマネジメントです。しかし、その発生する事象を全く予想できない場合は、最初の計画に含めることができません。「想定外」は置かれた状況や環境などによって、様々な事象として発生しますので対応策をなかなか準備できません。

想定できれば、最初からその事象に対する対応案・対応策を準備できますが、全く想定外の事象が発生することがあり、その時にどう対応できるか、どう対応すべきかを考えておく必要があります。ここではリスクを想定し、対策を準備できた時の例をあげます。

3年前の7月に、中国浙江省杭州のソフトウエアパークにある、オフショア開発の委託先に出張した時の出来事です。

出張3日間のうち2日間は仕事のスケジュールをしっかりと決めていました。オフショア開発の委託先に業務仕様を説明することが主な仕事です。テレビ会議ではなかなか伝わらないようなことも、直接会って説明することにより理解が深まります。

また、オフショア開発の担当者の生活や習慣を知ることができ有意義でした。

中国の担当者はTV会議では聞きにくいことや、日本語が堪能でないため質問を遠慮してしまうことでも、自社の会議室であれば割合のびのびと質問できます。

オフショア開発企業のシステムエンジニアとプログラマーは、入社した時から日本語教室で強制的にレッスンを受けていますので、殆どの人は日本語が話せます。

一日目の夜は、現地駐在員主催の歓迎会があり、開発メンバーと会食しました。一層、親密になれたような気がしました。

乾杯の時には、文字通り杯を飲み干して空にしなければなりません。筆者はお酒が飲めないので、杯を逆さにしていましたが、一緒に出張した同僚二人は「カンペイ」「カンペイ」と囃し立てられ、その場の雰囲気にも乗せられ一番強いお酒「白酒(パイチュウ)」を一気に飲み干していました。白酒のアルコール度数はウオッカと同じくらいで60度もあります。それでも一気に飲むと喉をすーっと通るそうです。

同僚が勧められるまま飲むので心配になり、「杯を逆さにしてもう飲まないように」と途中で助言しました。まだ元気なうちに、止めたつもりでした。

現地駐在員から西湖の蓮の花は今最高に見ごろなので、明日早朝見に行った方がいいと勧められました。明らかに飲み過ぎた同僚をホテルの部屋まで送っていき、翌朝は5時半に起床しホテルのロビーで6時に待ち合せることにしました。15分待っても来ない場合は先に行くことを3人の合意事項にしておきました。

翌朝心配した通り6時になっても同僚の一人はホテルのロビーに来ません。電話をかけてみましたが出ません。6時15分になり再度電話をかけてみましたがやはり出なかったのでもう一人の同僚と出かけました。

この場合は15分しか待たないと宣言しておきましたので、15分以上無駄にすることなく散歩を満喫できました。待ち合わせに来なかった同僚は二日酔いのため寝坊したとのことです。

その同僚には申し訳なかったのですが、今までに見たことのない素晴らしい蓮の花を見られました。

「早起きは三文の得」を実感しました。早朝の湖畔には太極拳をやっている人たち、独自の体操をしている人たち、水筆(ペットボトルに水を入れその先に取り付けた筆)でコンクリートの地面に文字を書いている人たち、曲に合わせてダンスをしている人たちがいました。早朝からさまざまな活動をしている人たちをみて、元気をもらいました。

リスクを想定し、それに対応できたのでリスクマネジメントが成功したと思っています。こういう小さなことから、実施してみてはいかがでしょうか。

「より広く リスク押さえな あきまへん」

数年前のことですが、ある展示会に行くことにしていました。運悪く、台風が接近しつつありました。そこで会場までの経路を複数種類検索し、いくつかの到着地点ごとに、電車が止まったらその地点からどのルートで行くとよいかを細かく調べました。予想通り台風が関東近くを通過して、電車が軒並みダイヤ遅れ、運転見合わせとなりましたが、用意周到なリスク対応策の効果があって、朝10時の開場前に無事に展示会場に到着できました。しかし、なんと展示会は午前の開催は中止となっていたのです。会場の受付に確認してみると、展示会に出展している各企業、団体、学校の説明員が到着しないためということでした。個人プロジェクトとしては大失敗でした。台風接近というニュースを聞いてから、個人プロジェクトの目的が会場に到着することになってしまい、展示会を見学して今後の市場動向を調査するという本来の目的から離れてしまっていたのです。すなわち、本来考えるべき展示会が開催されないというリスクが漏れてしまったのです。日頃から、「リスクを考えるように」と言っている者としては情けない出来事でした。

個人プロジェクトにおいて、予めリスクを洗い出してその対応策を考えておくことは大事です。その際に重要なことは個人プロジェクトの本来の目的に照らしてリスクとその対応策を考えることです。まれに本来の目的からはずれたことに注力してしまうことがあります。個人でやっているだけになかなか自分では気づかないものです。そういうときのために、たまには一旦立ち止まって今やっているプロジェクトをふりかえってみましょう。新たな気づきがあるはずです。

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