現在、我が家は自治会の輪番制の理事、つまり隣組の班長です。この辺りでは班長の仕事は主婦が行いますが、我が家も同じです。集金、資料配布、回覧、打合せ等で、班内の6戸が1年交代で担当し、近所のアパート2つを含む16戸の区域のお世話をするルールになっています。ただ、アパートには階段があったり集金が難しかったりで、何かと手間がかかるようです。
ゴミ置場の世話は一番大変なので同じ6戸で週単位の当番制です。生ごみの日は満杯となり車が通りにくいほどです。前はノラ猫が興味深そうに遊びにきては宝さがしをしていましたが今は生ゴミには全く興味が無いようです。代ってカラスが荒らすようになり始末に負えませんでしたが、幸い旨い食事が他にあるらしく前ほどは荒らされなくなり皆でほっとしていました。
ところが先日、近所に3階建7戸のアパートが突然出現しました。建設が終りシートが外され初めてそれと分りました。梯子状の階段が巡らされたデザイナーズ・マンションとのフレコミです。なるほどそうみると確かに恰好がいいし、階段がジャングルジムのようで若者向きに見えます。しかし各戸へは全部別々の階段上のドアまで行かないとポストがありません。専用ゴミ置き場もなく満杯の置場に相乗りをされそうでこれはたいへん!
何が建設されるのか掲示されず近所の誰も知りませんでした。アワを食った班長、つまり家内が皆と相談した結果、6戸で団結し自治会へ要望を出すことになりました。「新7戸は自治会別班を作り、ゴミ置き場は専用を用意してほしい」と。情報を遮断されていたステークホルダーの反応は一般的にこうなるわけでしょう。専用ゴミ置き場は作られましたが、他の要望は班長交代後も続けられました。最終的に回覧物置き場が1階に設けられ、集金はず少し遠いですがその大家1軒に行けばよくなりました。しかし後味のよいことではありません。
さて話は変わりますが、パーソナルプロジェクトで関係者の賛同が大事な点は同じことでしょう。例えばビジネスマンが人生の大目的を思い立ち、熱心に取り組み始めたとします。勉強時間は夜なので、家族の団欒を早めに切り上げ部屋にこもり目的へと邁進しようとしますが、なかなかそうはいきません。
最重要ステークホルダーである配偶者をつんぼ桟敷にすると問題が起きます。事前に目的が共有されある程度の賛同が得られた場合には、問題はしばらく出ないでしょう。二人で行うプロジェクトは終盤まで大丈夫でしょう。とにかく、成功するにはステークホルダーの協力が欠かせません。個人の場合、関係者はいつもほぼ同じなのでとくに重要だと思います。
パーソナルPMでのステークホルダー・マネジメントのサイクルは、たいていの場合次のような図で表せると思います(見えにくい時は図をクリックしてください)。
もちろん関係者を識別(特定)し「パワー/インタレスト・グリッド」(横軸を関心の強さ、縦軸を影響力の強さとする平面)で位置付けをし、どうマネジメントするか考えるなどのやり方は、組織のPMの場合と同じです。その次に、自分の掲げる目的が相手の視点ではどんな価値があるか、と考えを巡らせるわけです。
小さな成果を得た時に相手とそれを共有することは何よりも大事だと思います。プログラム中の次のプロジェクトへの支援がより強力になります。協力者自身がやり遂げたという達成感を少しでももってもらえば、さらによい支援が得られる点は次の名言に通じることだと感じますがどうでしょうか。
参考: 悠兮其貴言、功成事遂、百姓皆謂我自然 = 悠としてその言をおもくすれば、功成り事を遂げ、百姓の皆我らが自ら然りと謂わん = 成功した際、相手が自分が参画したからこそ達成できたと思うようにする = When the objective is achieved, his members will say: we did it ourselves. (老子道徳経第17章)
© 2015 Akira Tominaga. All rights reserved.