カテゴリー別アーカイブ: F 活動の優先度と性格による選択・集中

マルチステージの時代に

寿命の伸びは世界各国で顕著です。この60年ほどを見れば次のグラフのようになっています。日本では1947年から詳しい統計がとられていますし、欧州各国では19世紀半ば、または1920年代から作成されてきたのに驚きます。公開されている“Human mortality database”に蓄積された38か国のデータの中で、上昇傾向以外の複雑な動きはロシアだけで他に例外はみあたりません。(図が見づらい時はクリックしてご覧ください。)

例えば2007年に生まれた人の平均寿命は軽く100歳を超えるとの予測がされています(注1)。ところが先進国の人口ピラミッドは次のような形で、高齢者をささえる若年層が不足しています。改善の努力が先進国で行なわれてきましたが、ご承知のとおり日本は先細りが直っていません。ここに示しませんが、例えばインドやマレーシアでは各国の寺院の屋根のような形、アフリカ諸国では下辺の広いピラミッドです。(図が見づらい時はクリックしてご覧ください。)

若年層が少ないと平均寿命に影響するのかちょっと気になりますし、イスラエルの人口構成がきちんとしているのにも驚きます。少し脱線しますが、疑問を解くため年齢別の死亡率を調べたところ、高齢層と若年層では桁違いの差があり平均寿命に殆ど影響しないことが分りましたので更新しておきます。下の図は日本とイスラエルの比較です。

要するに平均寿命は純粋に伸びています(米英等で最近になって横ばい気味なのが気にはなりますがきっと原因があるでしょう)。仕事時代より退職後が長くなっているでしょうし、それを支える長い「年金生活」という発想は成り立ちにくくなるでしょう。

人生が1)学び、2)勤め、3)隠居の3ステージから成るという過去の観念は捨てる必要があるでしょう。ステージが混じり繰返すような「マルチステージ」(注1)の人生が増えるというわけです。日本では15歳未満と65歳以上が被扶養層と定義されていますが、70歳、さらに80歳まで仕事をするのが常識となるかもしれませんし、年齢だけでの差別はなくしていくべきと思えます。

最近のパーソナルPMコミュニティの会合で、メンバーの徳永光彦さんがマルチステージを取り上げられたのに触発され、筆者を含め多くのメンバーが現代の人生におけるその重要性に改めてフォーカスしています。一人では気づきにくいことも皆と検討すると気づくことの典型でしょう。

若手メンバーの柳沢大高さんは、スキル修得に関する執拗な研究成果の一端を、一般向け書籍として書かれています。8月23日に発行されることになりました。マルチステージへ向けた「学び」へ正面から向き合うための格好の書となることを期待しています。

改めて身近な人たちを見回せば、マルチステージを実践している人は既にたくさん居るのに気づきます。皆様の周囲にもおられるでしょうし、考えてみれば筆者もその仲間です。それが続けられるためには健康が第一ですし、自分で考えるミッション(目的の構造化)、柔軟な思考や新しいことを受容れる姿勢などがますます大事になると思います。

パーソナルPMコミュニティでは2018年10月14日(日)の午後、「パーソナルPMシンポジウム2018」(参加無料)を都内で主催することとなりました(満席となりお申し込みを締め切らせて頂きました)。

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その中で徳永さんのマルチステージ実践に基づく発表も予定されています。投稿が長くなり過ぎるため、「パーソナルPMシンポジウム2018」については後ほど別投稿としてご案内したいと思います。パーソナルPMに少しでもご興味をお持ちになられたら、どなたでも気楽にご参加いただけるようお待ちしています(すでに満席となりお申し込みを締め切らせて頂きました)。

(注1)Lynda Gratton & Andrew Scott, The 100 year Life,2016. 池村千秋訳、ライフシフト、東洋経済新報社、2016.

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やりたいことの前に、やりたくないこと削ぎ落とす

新製品開発において、経営効果の最大化の為、限られたリソース(人、設備、資金)を有効活用する必要があります。あらかじめ、赤字が予想されるプロジェクトにリソースを投入すると、会社は窮地におちいります。いかに赤字プロジェクトを少なくし、黒字が見込まれるプロジェクトへリソースに集中させて行くことが必要です。黒字プロジェクトを増やすことはもちろんですが、お客様との関係もあり、経営戦略上、赤字でも必要な場合があります。複数のプロジェクトの中で、どのプロジェクトを採用するか不採用とするか、高度な意思決定が求められます。

個人にとってもプロジェクト(やりたいこと)は、たくさん浮かんできます。その中で本当にやること、やらないことを、常に意思決定しなければなりません。現在のように情報があふれている中では、やりたいことから考えるより、やりたくないことを判断の基準とし、削ぎ落とす方法があります。例を10個挙げてみます。

 

  • コンプライアンス上問題ある。
  • 価値観をベースとした目的と整合性がとれない
  • 達成感が得られない
  • 優先順位を考えない
  • 締切に追われる。
  • 先の見通しができない。
  • 自身の裁量にまかされない
  • 身の回りの人に迷惑がかかる。
  • ひとつのことに没頭し、まわりが見えなくなる
  • 自身の成長に繋がらない

 

© 2015 Mitsuhiko Tokunaga, All rights reserved.

TIME IS LIFE

私は自分の時間を管理するために、長年To-doリストを使っています。ルーチンワーク以外のやることをそこに全部書くのですが、媒体はあるときから紙ではなくなり、表計算ソフトを継続的に使っています。小さなことは先にやってから後でそこへ書くこともあります。それが継続のコツだと思っているからです。

ただ、書いたことを全部やろうとすると、時間の足りないことがあります。予定外の急用や、時間の見積り違いがあったりするからです。作業項目の重要度で色付けをし、どこまで丁寧に深くやるかを調節することで、徹夜をなんとか避けてきました。

ところがそうやってもしばしば限界があります。そんな時は、人に約束した項目を必ず守ろうとしますから、犠牲になるのは自分のTo-do項目です。ずるずると後ろへずれるわけですが、それが癖になると大事な目的がおろそかになります。そのことをズバリと指摘しているのが、アラン・ラーキン(Alan Lakein)です。ラーキンはそういう大事な目的を「A目的」と呼びます。

1970年代後半のベストセラー「タイムマネジメント」(How to Get Control of your Time and your Life)の著者がラーキンで、クリントン元大統領著「マイライフ」のまえがきにもいきなり登場します。クリントンは若い時にその本を読んで人生が変わったと書いています。ラーキンはベンジャミン・フランクリンの”Time is money.”を”Time is life.”と言い換えています。

一般的にA目的の活動を避ける理由は、単に忙しいということ以外にも、そもそも無理な設定をしたとか、決めたがやる気がおきないとか、色々ある点をラーキンは細かく指摘しています。最近改めて気づいて読み直したラーキンのやり方は、私が考えてきたような中途半端なものではありません。優先度の低いTo-do項目を切捨てる(人にやらせる事も含む)とか、2割8割の法則を適用し上位2割以外はやらないとか、私から見るとかなり乱暴にも見えます。しかし根本的にはそういう優先順位付けとA目的への執着・集中は極めて大事なことだと思います。

A目的に手が出ないときには、そこから「インスタント・タスク」を切り出したり、随分早くからそのあちこちをつついて、時間が10分でもあればやっておくという「スイスチーズ法」を使ったりなど、あの手この手を持ち出します。

さて、そういえばそのような「スイスチーズ」の絵をどこかで見たなあと、なかなか思い出しませんでした。あるとき別の用事で、相当昔にマネジメント研修を米国で受けた時の資料を見て驚きました。Agendaの中になんとそのラーキンの講義がはいっていたのでした。講義タイトルではわかりませんが講師は紛れもなくその著者です。気づかなかったのもおかしな話ですが、パーソナルPMが大事だとずっと考えていた潜在意識には、そういうこともあったのかと気づかされました。

時代は変わり、その20年後に実践の知恵であるモダンPMも体系化されてきました。また、現代では技術の進歩で個人の行動記録が自動的にとれる対象も増えました。時とともに繁忙感が増し、パーソナルPMを追究する意義は増していると思います。考え方次第ですが人生はプロジェクトで成りたっており、そういう視点ではLife is projects.とさえ言えそうです。PMの知恵が有益で、そこには形式知としての発展の余地があると思います。ラーキンの知恵も、改めて新しい視点でパーソナルPMに組み込もうと考えます。

パーソナルPMは個人が行うミクロなことであるとも言えますが、偉大な物事は個人の意志から始まるとも言えます。一昨日パーソナルPMコミュニティの80回目の会合を行いました。小さくとも執拗に食いつくウッドピンチを、縁起のよい80回目の参加記念品にしました。個人プロジェクトで作った装置を使って、木に刻印をしたものです。ただの木製洗濯バサミですが。

ウッドピンチ

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