私は自分の時間を管理するために、長年To-doリストを使っています。ルーチンワーク以外のやることをそこに全部書くのですが、媒体はあるときから紙ではなくなり、表計算ソフトを継続的に使っています。小さなことは先にやってから後でそこへ書くこともあります。それが継続のコツだと思っているからです。
ただ、書いたことを全部やろうとすると、時間の足りないことがあります。予定外の急用や、時間の見積り違いがあったりするからです。作業項目の重要度で色付けをし、どこまで丁寧に深くやるかを調節することで、徹夜をなんとか避けてきました。
ところがそうやってもしばしば限界があります。そんな時は、人に約束した項目を必ず守ろうとしますから、犠牲になるのは自分のTo-do項目です。ずるずると後ろへずれるわけですが、それが癖になると大事な目的がおろそかになります。そのことをズバリと指摘しているのが、アラン・ラーキン(Alan Lakein)です。ラーキンはそういう大事な目的を「A目的」と呼びます。
1970年代後半のベストセラー「タイムマネジメント」(How to Get Control of your Time and your Life)の著者がラーキンで、クリントン元大統領著「マイライフ」のまえがきにもいきなり登場します。クリントンは若い時にその本を読んで人生が変わったと書いています。ラーキンはベンジャミン・フランクリンの”Time is money.”を”Time is life.”と言い換えています。
一般的にA目的の活動を避ける理由は、単に忙しいということ以外にも、そもそも無理な設定をしたとか、決めたがやる気がおきないとか、色々ある点をラーキンは細かく指摘しています。最近改めて気づいて読み直したラーキンのやり方は、私が考えてきたような中途半端なものではありません。優先度の低いTo-do項目を切捨てる(人にやらせる事も含む)とか、2割8割の法則を適用し上位2割以外はやらないとか、私から見るとかなり乱暴にも見えます。しかし根本的にはそういう優先順位付けとA目的への執着・集中は極めて大事なことだと思います。
A目的に手が出ないときには、そこから「インスタント・タスク」を切り出したり、随分早くからそのあちこちをつついて、時間が10分でもあればやっておくという「スイスチーズ法」を使ったりなど、あの手この手を持ち出します。
さて、そういえばそのような「スイスチーズ」の絵をどこかで見たなあと、なかなか思い出しませんでした。あるとき別の用事で、相当昔にマネジメント研修を米国で受けた時の資料を見て驚きました。Agendaの中になんとそのラーキンの講義がはいっていたのでした。講義タイトルではわかりませんが講師は紛れもなくその著者です。気づかなかったのもおかしな話ですが、パーソナルPMが大事だとずっと考えていた潜在意識には、そういうこともあったのかと気づかされました。
時代は変わり、その20年後に実践の知恵であるモダンPMも体系化されてきました。また、現代では技術の進歩で個人の行動記録が自動的にとれる対象も増えました。時とともに繁忙感が増し、パーソナルPMを追究する意義は増していると思います。考え方次第ですが人生はプロジェクトで成りたっており、そういう視点ではLife is projects.とさえ言えそうです。PMの知恵が有益で、そこには形式知としての発展の余地があると思います。ラーキンの知恵も、改めて新しい視点でパーソナルPMに組み込もうと考えます。
パーソナルPMは個人が行うミクロなことであるとも言えますが、偉大な物事は個人の意志から始まるとも言えます。一昨日パーソナルPMコミュニティの80回目の会合を行いました。小さくとも執拗に食いつくウッドピンチを、縁起のよい80回目の参加記念品にしました。個人プロジェクトで作った装置を使って、木に刻印をしたものです。ただの木製洗濯バサミですが。
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