大地震への備えは頭で考えるだけでも有益

2011年の東日本大震災は未だに影響が去らないほど大きかったと思います。得た色々な教訓は、前向きに生かしたいものです。

その時某学会の研究大会が文京区の大学であり、筆者は発表寸前で座席でちょうどノートPCを用意していた時でした。揺れに驚きそのPCで調べて大地震とわかりました。妻の実家がある地域への津波の予報がありましたが、親せきが多く心配でした。電話はもちろん通じません。部屋の出席者多数に状況を伝え、筆者は発表をやめてすぐ退出することにしました。まもなく大会の事務局からも連絡が入り、全員が階段を歩いて建物を出ました。周囲の人たちに伝えてすぐに会場を後にしました。

そこからが肝心の話です。まず近くの電気屋でラジオを買い、自転車屋の場所を尋ねました。そのラジオで交通情報を聴きながら、滝野川の自転車屋へと急ぎました。1度使うだけの一番安い自転車を買い、前籠をつけてもらいながら店員にも足を確保したほうが良いと伝えたら、皆さんキョトンとしていました。後日のニュースではその後2時間で都内の自転車が売り切れたようでした。

ふだん持ち歩いている小さな方位磁石を頼りに、自転車で住まいの浦和へと向かいました。途中のコンビニで、念のために電池とパンなどを求め籠に満載して走りました。スマホなら方位も分かり情報も多くとれますが、そういうときは電池はなるべく節約するとよいと思います。途中の牛丼屋が営業していたので、念のために夕食をとりました。交通渋滞と歩道上の雑踏で意外にスピードが出ず、20キロほどを合計4時間かかって帰宅しました。

テレビやインターネットが津波の様子を伝えていました。妻の実家が津波で全壊したのを知るのにも、助かった義母を迎えに行くのにも、その後だいぶ日にちがかかりましたが、ここでは割愛します。使った自転車には滝野川警察署の鑑札がついています。

自転車の鑑札

今もある不要な1台ですが、番犬の代り(?)となっています。津波で失った妻の実家跡の地域にはまだ手がついていませんし、義母は現在は設備のよい介護施設を避難先としており戻れません。とはいえ、嫌な思い出は忘れて、爪痕は教訓としてだけ頭に残したいものです。

実は、その昔東北へ赴任していた時代に宮城県沖地震に遭遇しました。いつもの出張中ではなく珍しく仙台のオフィスにいました。激しい揺れに思わず壁に背中をつけて立ち上がりましたが、多くの社員は日頃のガイドのとおり、冷静に机の下に伏せていました。しかし、揺れで机が勝手に動いて行ってしまうとは誰も考えていませんでしたし、椅子が移動して外に面するガラスに当たりそうで危険でした。

電話は不通となり、交通はすぐ渋滞しました。お客様の状況は非常用電源のあるテレックスや無線などで段々とわかりました。そのうち日没で暗くなり、筆者は8キロ程を歩いて帰宅しました。途中パン屋に寄ると売り切れのため食パンの耳を無料で分けてくれ、電気屋では電池は売り切れのため使いかけの電池を無料でくれたのに感激しました。近所に倒壊した家もありましたが、住まいの借家は外見は無事。しかし案の定、家の中は戸棚や冷蔵庫まで倒れ、ガラス片だらけで惨憺たる状態の暗闇でした。妻や幼い子達のケガがないのが幸いでした。ライフラインが止まり数日間は食料も売り切れ、もらった電池も2日で全て切れました。東京から車でかけつけた社員の食料や非常用ライトなどの救援物資がとても有難かったものです。

そのときの教訓で、地震の際にやるべきことが頭にしみつき、迷わずに行動できたものです。「備え」とはいえ、実際は頭の中だけでの備えにすぎません。それでも、その有無で結果に大きな違いがでます。パーソナルプロジェクトであれ、何事であれ、個人にとって「頭で進行を考えておく」ということが、日ごろからの重要なリスクマネジメントの知恵であり、災害への備えであると思います。もっと厳しい災害がいつなんどき起きるかわかりません。

大災害に備え、リスクや危機への備えを今一度頭の中でシミュレーションし、いざという時の行動を確かめ、腹を据えるのが良いと思います。(2016年10月29日)

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雑魚キャラのように闘う

30年ぶりに再開した柔道を、今も細々と続けている。道場以外にも、筋トレに通い、毎日、最寄りより遠い駅に自転車で通勤し、少しでも進歩しようと試みてはいるが、50歳のおじさんが急に強くなるわけもなく、大人の中で僕が一番弱いのは変わらない。

道場に最近、中学生が入門してきた。休まず、一所懸命に練習しているが、大人たちにはなかなか歯が立たない。ある日、道場の先生が僕を指して彼に「まずはこのおじさんを倒すのを目標にしなさい」と話していた。越えられるかもしれない目標を提示して、やる気を失わないように、という配慮であろう。それは分かる。

ただ、その時、僕の脳裏によぎったのは、「俺は雑魚キャラか…?」ということだった。「俺様を倒さなければ、あの方に相見えることはできん!」と大見得を切るものの、案の定、主人公にあっさりとやられてしまう、昔の漫画によく出てきた“最初の関門”的キャラである。知っている人しか知らないと思うが、「北斗の拳」のジャギや、「魁!男塾」の男爵ディーノとかが代表格であろう。当然、当時20代だった僕はそんな雑魚キャラに特別な注意を払うこともなく、あるいは嘲笑、冷笑し、ケンシロウや剣桃太郎といった主人公キャラに自分を重ねていたのであった。

話は変わるが、この歳になって柔道を再開し、気付いたのは「自分がいかに負けること、恥をかくことを恐れているか」ということだった。とにかく、投げられるのが怖くて嫌でたまらない。手加減されるのも許せない。結果、やられまいとして身体はガチガチになり、やられる回数は減るものの、そんなに固くなっていては満足に技もかけられない。

反面、新しく入ってきた中学生も、たくさんいる小学生たちも、嬉々として、自分よりはるかに強い大人たちに稽古をつけてもらっている。何回投げられようが、お構いなしに飛びかかり、技をかけ続けている。

その姿を見て、自分が柔道を始めた高校生の時を思った。自分も彼らと確かに同じで、やられてもやられても、自分より明らかに強い相手に立ち向かっていた。

社会人としての自分はどうだろうか?新人の時はどんな仕事でも、たとえ失敗する可能性が高い提案やプロジェクトであっても、必死になって取り組んだ。それが年月がたち、上司という立場になり、責任を負い、適当に世間ずれし、仕事も少しはできるようになって、失敗できなくなり、そして失敗する回数も減っていった。否、失敗する可能性があることに挑戦しなくなっただけなのかもしれない。

そう考えると、今まで歯牙にもかけなかった雑魚キャラのすごさが身に染みてきた。確実に勝てない相手に対して不敵なセリフをはき、立ち向かい、そしてやられる。可能性としては二つしかない。被我の実力差が分からないほど頭が悪いか、負ける可能性が高いことを知っても立ち向かう勇気があるかだ。漫画での描かれ方からは、前者の可能性が高いことが強く示唆されてはいるが、雑魚キャラとて闘う者のはしくれ、僕でさえ見た瞬間、組んだ瞬間に感じられる実力差が分からないはずはない。勝てると思って、勝つことを信じて闘う主人公より、負けると知ってなお闘う雑魚キャラの方が、本当は勇気があるのではないか。

柔道でも仕事でも、いい雑魚キャラになりたい。一回もやられたくないとガチガチに守るより、十回投げられてもいいが一回でも倒すという闘いをしたい。それができて初めて、「負けない代わりに勝ちもしない」毎日を乗り越えることができるのだろう。

けれども、たとえそうしたとしても、僕は2~3年後に高校生になった彼に投げられるだろうし、十回やられるだけで一回もやれないかもしれないし、それはもしかしたら柔道だけではなくて、仕事も人生もそうかもしれない。それでも雑魚キャラらしく、最後まで不敵なセリフをはき続けていたいと思った。

 

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やる気を失う要因の逆は、必ずしもやる気を出す要因ではない

ある時パーソナルPMの追究メンバーで、「自分でやる気を出す方法を整理してみよう」ということになりました。やる気を出す方法は書物やWebにずいぶん沢山出ています。ところが人によっては全然効き目がなさそうなものも見当たります。特定の人の状況での経験や、仮説などですから、そういうこともあるでしょう。

カテゴリー分けを試みると最初はおよそ40の方法になりました。それらの効果を何らかの根拠に基づいて検討したいわけです。プロジェクトマネジメントの知恵は実践の積み重ねによる形式知です。それに倣って、メンバーが自分の経験を振り返り、「やる気が出なくなるケース」をできるだけたくさん挙げようということになりました。
メンバーからは出るわ出るわ、やる気をなくすケースなら何と沢山あることでしょうか。「特別に頑張って結果を出したのに上司が気付かない」「出勤前に配偶者に愚痴を言われる」「昇給が同期より少ない」「皆の前で怒られた」「仕事場の雰囲気が暗い」など、80数ケースも出てきました。カテゴリー分けを試みていった結果24種類になりました。
やる気を出す方法は、組織に有効でも個人には効かなそうなものを外していったん33個となりました。やる気をなくす要因の行とやる気を出す方法の列をマトリックスにすると交点が800近くあります。それらを一つずつ点検していきました。やる気をなくす場合に、各方法が効くかどうかを点検したわけです。
その過程で、やる気のない状態から脱出できるものの、「何かに挑戦したい」とか「やる気に火が付く」といったところにまでは至らない場合があることに気付きました。モチベーション理論における『ハーズバーグの2要因説』の通りなのでした。積極的な動機づけをする要因と、動機を失う要因(衛生要因)とがあり、後者を解決しても前者になるとは限らないという理論です。ハーズバーグが示す動機づけ要因から4カテゴリーをマトリックスの行に追加し、カテゴライズを修正し22種が残りました。つまり最終的には24x22を点検したことになります。

こうして「個人がやる気を出す方法10選」を選ぶことができました。もし私達が基礎理論を先に何も検討していなかった場合は、そのようなことに気付かなかったのではなかろうかと、半分ゾッとしたのでした。

組織のPMではメンバーの動機づけやソフトスキル面がしばしば議論されます。そういう場合も毎度ゼロから議論するのではなく、心理学の基礎的な理論等をある程度踏まえたうえで自由に議論することが、建設的な結論を得るには大事なことだと思いますが皆さまはどう思われますか?

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パーソナルPMとファイナンシャル・プランニングの関わり

人生の夢や目標をかなえるために総合的な資金計画を立て、経済的な側面から実現に導く方法としてファイナンシャルプランニング(以降FPと呼ぶ)があります。
個人を対象とし個人の目的や目標を目指すという点で、パーソナルPMとFPは共通点があります。

パーソナルPMがモダンPMの考えや特に個人のやる気に注目し、FPが経済的側面を重視している点では違いがありますが、目指すところは一緒です。

そこで、FPが扱っている以下の6つの領域を検討してみます。
①金融資産運用設計②不動産運用設計③ライフプランニング・ リタイアメントプランニング④リスクと保険⑤タックスプランニング⑥相続・事業承継設計
これらは、パーソナルPMとしても、とても大切な領域です。

個人にとって、経済的な側面で、インパクトが大きいのが住宅取得、教育費、老後の費用です。その為に、中長期的な計画をしっかり立て早い段階から準備し、リスク対策をしっかり、行っておくことが必要です。
日頃から家計にかかわる金融、税制、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度などの知識に関心を持つことが、大切になってきます。

個人版の事業計画とも言うべき、年毎の収入と支出を明確にしたライフイベント表を作成し、将来、お金がいくらかかるかということを家族の中で会話をするだけでも、将来への不安を、少しづつ拭い去ることができます。

ライフイベントの変化があるときは特に要注意です。例えば保険の見直しが必要になります。子供が小さいときと、自身の死亡保障は大きく、子供が就職したときは、死亡保障は少なくして、逆に医療保障を充実させるといったことも対策が必要になります。

もちろん、ライフイベントにおいて、リスクへの備えも必須です。
自身を含めた家族の重い病気への備え、教育費が上振れする場合の対策、加えて、身近な人の介護が必要になった場合や認知症になった場合などです。また、相続などの問題も起こることも考えられます。

人生の夢や目的、目標に向けた中長期計画を策定し、ライフステージ毎に見直し、あらかじめリスクを想定し対策を練っておくことが、とても大切だと思います。

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衣替えごとの片づけについて

衣替えの季節ですが、いつも失敗するクローゼットの片づけについてパーソナルPMを利用しようと思います。

片づけが苦手な筆者としては、個人の性格の違いか、男女の違いか、整理してみたいと考え、周囲の人たちに調査しました。一般的に女性の方が買い物好きで、物を捨てられないタイプが多いと感じました。女性は「値段が高かったものについて、特に傷んでもいないものは捨てるのがもったいない」という考えからではないかと思います。一概に男女の違いとは言えないのですが、モノを大切にするため捨てられないというだけでなく、女性は男性より空間整理が苦手だからではないかと推理しました。

最近流行している片づけコンサルタント近藤麻里恵(コンマリ)さんの「人生がときめく片づけの魔法」[1]によると、だれでも片づけができるようになり、一度きれいにすると、リバウンドはしないという内容が書かれていました。

コンマリさんのやり方は、一度に家じゅうのものを集めて全部 “ときめく”か、“ときめかないか”を見極めてときめくものだけを家に残す、というやり方です。筆者には、その時間がとれません。てっとり早く近藤さん(こんまりさん)にお願いしたい気持ちです。

でも我が家のステークホルダーである夫は片づけ上手な一番身近な先生です。きっと、先生を見習えばクローゼットを片づけるという目標を達成できると思います。そして一番喜んでくれると、思います。

夫の片づけについての考え方は単純明快です。「同じ種類のものは同じ場所にしまうこと」、「取り出して使ったら、また元の場所に戻すこと」、「必要以上にものを増やさないこと。つまり新しいものを一つ買ったら、一つ捨てること、二つ買ったら、二つ捨てること」です。確かに、洋服に限らず買ったら捨てる、とすれば、物があふれることは、ないというわけです。理屈はわかるのですが、なかなか実践できず、捨てるのを、あとからにしよう、とか、もう一回使ってから、とか、誰かにあげるのでその時までしばらくだけしまっておこうとか、考えてしまい、やはり片づけが遅れ、失敗しています。

筆者の夫は、衣替えの季節にいつもクローゼットを使いやすいように整理します。夫の領域と筆者の領域は分かれていますので、自分の不要な洋服を整理し、ごみ袋に入れ、捨てておくよう依頼されます。夫の基準は、充分着たと判断したものつまり着古したものや色あせたものを入れ替え時期と判断し、ごみ袋行にします。そして捨てたものと同様の役割を果たすものを補充します。買い物は一緒に行くこともありますが、ほとんど筆者の担当になっています。衣替えの一連の流れは夫にとっては季節の変わり目ごとの通常のタスクですが、筆者には、なかなか大変な作業ですので、パーソナルプロジェクトマネジメントとして取り組むことにします。クローゼットの自分の部分だけですが、この夏、挑戦します。

いつも言い訳にしている「忙しいから」とかは、止めます。

アラン・ラーキンの「時間の波に乗る19の法則」[2] によると、「忙しい人ほど時間がある」と書いてあり、優先順位をつけてA,B,CのAだけについてやるなど、時間を上手に使って、忙しいからという言い訳をするのはやろうとしていないだけだそうです。
改めて私も片づけプロジェクトに、着手することにしました。

LL:洋服を買うときは、どれの代わりにこれを使用するのか、クローゼットのどの場所にこれを配置することになるかを、考えることにしようと思います。まさにパーソナルプログラムマネジメント[3]の中の「ステークホルダーの賛同/好感を得ることができる」はずです。

参考文献

[1]近藤麻理恵著 「人生がときめく片づけの魔法」 サンマーク出版社

[2]アラン・ラーキン著 奥健夫訳 「時間の波にのる19の法則」 サンマーク出版社

[3]パーソナルPM研究会/冨永章編著 「パーソナルプロジェクトマネジメント」 日経BP社

 

健康におけるインシデントマネジメントの事例

会社勤めをしている自分にとって、毎年欠かさず受けているのが、定期健康診断です。検診後1か月たって、結果が通知されます。以前は結果を確認して、体重がどのくらい増えたとか血圧が少し高いということだけで、特にアクションを起こすようなことはありませんでした。

検診結果について、以前、産業医から説明を受けたことがあり、このまま放置すると内蔵肥満に起因する動脈硬化から、重大な疾患が発生する確率が大幅に高くなるというお話を聞く機会がありました。
そのことで定期健診のデータをインシデントと考え、大事故(大きな病気)の予防と考え行動する決意しました。自身の場合は血圧が高いことで、いろいろな取組みをしました。

どれがもっとも効果的かというはっきりとしたことは言えませんが、自身が取り組んでいることを列挙します。体重は減らす方がよいということと、塩分の摂取量が多いので①接種カロリーを考慮し脂っこい料理は避けること。ただし、ですから年末年始含めた長期休暇等はどうしても気がゆるむことあり、1kgから2kg増えることが常でした。休暇明けは、特に気を付けて調整するようにしています。②調味量は、塩分が少ないものの代替えできないかと考え例えば揚げ物等にソースの代りにゆず等をかける。③夕食後の40分程度のウォーキングを行う。(自宅付近のウォーキングコース、自身が設定したもの) ④塩分摂取が高い自身にとって、カリウムを多く含んだ食品である発酵食品(納豆)や乳製品(ヨーグルト)を毎日かかさず摂取する。⑤血圧測定を3日に1回程度は、決められた時刻に実施する。⑥体重は週に1回程度測定することを行いました。

以前、中学の同窓会で友人の医者に聞いたところ、酒は飲めればいくら飲んでもよいが、血圧の値は、低く抑えたほうがよいとのことです。その医者は、血圧が高めで、以前から降圧剤を飲んでいるとのことでしたが、自分は降圧剤を飲むほどではないと言われました。
アルコールについては、自身はコップ一杯程度で赤くなるタイプで、数年前会社の忘年会で、料理の用意できる前にビールだけ飲んで、体内のアルコール濃度が高くなり、意識失うような状態となることがありました。それ以来、控えるようにしており、付き合いで飲まなければならない雰囲気の場合でも最初に一杯だけにして、2杯目め以降はソフトドリンクを飲むようにしています。

以上、述べましたが、血圧対策としてどれがベストとは言い切れませんが、どれひとつ欠いてもいけないと思っています。これからも地道な取り組みをして大事故(大きな病気)の未然防止に取り組んでいきたいと思っています。

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やりたいことの前に、やりたくないこと削ぎ落とす

新製品開発において、経営効果の最大化の為、限られたリソース(人、設備、資金)を有効活用する必要があります。あらかじめ、赤字が予想されるプロジェクトにリソースを投入すると、会社は窮地におちいります。いかに赤字プロジェクトを少なくし、黒字が見込まれるプロジェクトへリソースに集中させて行くことが必要です。黒字プロジェクトを増やすことはもちろんですが、お客様との関係もあり、経営戦略上、赤字でも必要な場合があります。複数のプロジェクトの中で、どのプロジェクトを採用するか不採用とするか、高度な意思決定が求められます。

個人にとってもプロジェクト(やりたいこと)は、たくさん浮かんできます。その中で本当にやること、やらないことを、常に意思決定しなければなりません。現在のように情報があふれている中では、やりたいことから考えるより、やりたくないことを判断の基準とし、削ぎ落とす方法があります。例を10個挙げてみます。

 

  • コンプライアンス上問題ある。
  • 価値観をベースとした目的と整合性がとれない
  • 達成感が得られない
  • 優先順位を考えない
  • 締切に追われる。
  • 先の見通しができない。
  • 自身の裁量にまかされない
  • 身の回りの人に迷惑がかかる。
  • ひとつのことに没頭し、まわりが見えなくなる
  • 自身の成長に繋がらない

 

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個人プロジェクトのステークホルダーは特別に大事

現在、我が家は自治会の輪番制の理事、つまり隣組の班長です。この辺りでは班長の仕事は主婦が行いますが、我が家も同じです。集金、資料配布、回覧、打合せ等で、班内の6戸が1年交代で担当し、近所のアパート2つを含む16戸の区域のお世話をするルールになっています。ただ、アパートには階段があったり集金が難しかったりで、何かと手間がかかるようです。

ゴミ置場の世話は一番大変なので同じ6戸で週単位の当番制です。生ごみの日は満杯となり車が通りにくいほどです。前はノラ猫が興味深そうに遊びにきては宝さがしをしていましたが今は生ゴミには全く興味が無いようです。代ってカラスが荒らすようになり始末に負えませんでしたが、幸い旨い食事が他にあるらしく前ほどは荒らされなくなり皆でほっとしていました。

ところが先日、近所に3階建7戸のアパートが突然出現しました。建設が終りシートが外され初めてそれと分りました。梯子状の階段が巡らされたデザイナーズ・マンションとのフレコミです。なるほどそうみると確かに恰好がいいし、階段がジャングルジムのようで若者向きに見えます。しかし各戸へは全部別々の階段上のドアまで行かないとポストがありません。専用ゴミ置き場もなく満杯の置場に相乗りをされそうでこれはたいへん!

何が建設されるのか掲示されず近所の誰も知りませんでした。アワを食った班長、つまり家内が皆と相談した結果、6戸で団結し自治会へ要望を出すことになりました。「新7戸は自治会別班を作り、ゴミ置き場は専用を用意してほしい」と。情報を遮断されていたステークホルダーの反応は一般的にこうなるわけでしょう。専用ゴミ置き場は作られましたが、他の要望は班長交代後も続けられました。最終的に回覧物置き場が1階に設けられ、集金はず少し遠いですがその大家1軒に行けばよくなりました。しかし後味のよいことではありません。

さて話は変わりますが、パーソナルプロジェクトで関係者の賛同が大事な点は同じことでしょう。例えばビジネスマンが人生の大目的を思い立ち、熱心に取り組み始めたとします。勉強時間は夜なので、家族の団欒を早めに切り上げ部屋にこもり目的へと邁進しようとしますが、なかなかそうはいきません。

最重要ステークホルダーである配偶者をつんぼ桟敷にすると問題が起きます。事前に目的が共有されある程度の賛同が得られた場合には、問題はしばらく出ないでしょう。二人で行うプロジェクトは終盤まで大丈夫でしょう。とにかく、成功するにはステークホルダーの協力が欠かせません。個人の場合、関係者はいつもほぼ同じなのでとくに重要だと思います。

パーソナルPMでのステークホルダー・マネジメントのサイクルは、たいていの場合次のような図で表せると思います(見えにくい時は図をクリックしてください)。

Stakeholder Management

もちろん関係者を識別(特定)し「パワー/インタレスト・グリッド」(横軸を関心の強さ、縦軸を影響力の強さとする平面)で位置付けをし、どうマネジメントするか考えるなどのやり方は、組織のPMの場合と同じです。その次に、自分の掲げる目的が相手の視点ではどんな価値があるか、と考えを巡らせるわけです。

小さな成果を得た時に相手とそれを共有することは何よりも大事だと思います。プログラム中の次のプロジェクトへの支援がより強力になります。協力者自身がやり遂げたという達成感を少しでももってもらえば、さらによい支援が得られる点は次の名言に通じることだと感じますがどうでしょうか。

参考: 悠兮其貴言、功成事遂、百姓皆謂我自然 = 悠としてその言をおもくすれば、功成り事を遂げ、百姓の皆我らが自ら然りと謂わん = 成功した際、相手が自分が参画したからこそ達成できたと思うようにする = When the objective is achieved, his members will say: we did it ourselves. (老子道徳経第17章)

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好きな言葉を集める

人生のプロジェクトは、必ずしも行き先が明確ではなく、環境にも左右される。特に20代は、高校や大学といった学校生活を終え、いよいよ社会人として、未知の世界に乗り出す。その時、今まで想像していなかったような判断や決断が求められることがある。そのような場合に、一度、自分自身を見つめなおし、どういう判断をすれば良いかを検討することがとても重要になる。

筆者がおすすめしたいのは、好きな言葉をノートに書き出し、整理していく作業である。それにより、自分自身の特性が見えてくるし、また、判断に迷った時の判断基準となる。

当然、人により、好きな言葉が異なるのは当然であるが、ここでは、筆者が20代の時に作成したものの一部を下図に紹介する。

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自分以外の誰か、何かに没頭してこそ

「禁煙を成功させるには運動が一番だ!」と、ランニング、筋トレ、そして自転車通勤を始めたのですが、そうこうしている内に、「せっかく鍛えているのだから何か目的を持ちたい」という気持ちが昂じ、高校時代にかじった柔道を30年ぶりに再開することにしました。柔道の試合での勝利は、他のスポーツでの勝利以上に、自分に特別な高揚感を与えてくれると感じていました。「男性にとって“強い”ということは、無意識の奥底、本能に近いからこその高揚感なのだろう」「武道、格闘技を通じて自信を得ることは、今の仕事の役にも立つのではないだろうか」と思ったのです。

しかし、実際に道場に通い始めて分かったのは、「社会人になっても柔道を続けているのは強い人達ばかり」ということでした。高校や大学で柔道部やラグビー部に所属し、二段以上が当たり前、ずっと練習を積んできた20代や30代と戦って、30年のブランクがある50歳目前のおじさんが勝てるわけがなく、乱取りで投げられ、もしくは手加減され、自信を得るどころか粉々に砕かれてしまいました。道場の雰囲気はとても良く、そういう意味では楽しいのですが、“土佐犬の群れに紛れ込んだスピッツ”のように、「稽古自体が恐怖」という感覚に陥ってしまいました。

高校生の時は、たとえ投げられようとも、自分より明らかに強い相手にひたむきに立ち向かっていたのに、今はそれができない・・・このことから、自分がいかに、負けること、失敗することを恐れているのかを再認識しました。新入社員の時も、たとえ失敗しようともひたむきに取り組んでいたはずなのに、数十年が経ち、仕事に慣れ、上司という立場にもなり、失敗しない、失敗できないということに慣れるあまり、逆に「失敗を怖れて、失敗しそうなことには取り組まない」という姿勢が、知らず知らずの内に身に付いてしまったのかもしれない、と感じました。

ある日、打ち込みが終わって子ども達の乱取りの時間になり、疲れて道場の脇にへたり込んでいた時、怪我をさせないよう、また指導のため、多くの大人達が子どもの練習に付き添っていることに気付きました。それを見て、はたと「自分が強いとか、弱いとかではなく、目の前で練習している子ども達の役には立てるのではないか、いや、役に立ちたい」という思いが沸き起こってきました。それ以降、自分の打ち込みや乱取りが終わった後に休むのではなく、必ず子ども達に付き添い、見守り、応援するようにしました。しばらくして、子ども達の顔と名前が一致し始め、彼らの成長を心から喜べるようになった時、自分自身の稽古への恐怖心は消えていました。

パーソナルPMにおいて、やる気喪失への予防として「他人のためにやる」ことが挙げられています。また、心理学者のフランクルも“自己超越”という言葉を用いて、「人間は自分を忘れて対象に没頭した時のみ自己実現できる」という言葉を残しています。

柔道でも、仕事でも、「心のフォーカスが自分に向いている内は絶対に解決しない」ことを、「自分の勝ち負けや成功・失敗という次元で物事を捉えるのではなく、自分以外の誰か、何かに没頭することこそが大切である」ことを、この経験は期せずして教えてくれました。

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