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やる気を失う要因の逆は、必ずしもやる気を出す要因ではない

ある時パーソナルPMの追究メンバーで、「自分でやる気を出す方法を整理してみよう」ということになりました。やる気を出す方法は書物やWebにずいぶん沢山出ています。ところが人によっては全然効き目がなさそうなものも見当たります。特定の人の状況での経験や、仮説などですから、そういうこともあるでしょう。

カテゴリー分けを試みると最初はおよそ40の方法になりました。それらの効果を何らかの根拠に基づいて検討したいわけです。プロジェクトマネジメントの知恵は実践の積み重ねによる形式知です。それに倣って、メンバーが自分の経験を振り返り、「やる気が出なくなるケース」をできるだけたくさん挙げようということになりました。
メンバーからは出るわ出るわ、やる気をなくすケースなら何と沢山あることでしょうか。「特別に頑張って結果を出したのに上司が気付かない」「出勤前に配偶者に愚痴を言われる」「昇給が同期より少ない」「皆の前で怒られた」「仕事場の雰囲気が暗い」など、80数ケースも出てきました。カテゴリー分けを試みていった結果24種類になりました。
やる気を出す方法は、組織に有効でも個人には効かなそうなものを外していったん33個となりました。やる気をなくす要因の行とやる気を出す方法の列をマトリックスにすると交点が800近くあります。それらを一つずつ点検していきました。やる気をなくす場合に、各方法が効くかどうかを点検したわけです。
その過程で、やる気のない状態から脱出できるものの、「何かに挑戦したい」とか「やる気に火が付く」といったところにまでは至らない場合があることに気付きました。モチベーション理論における『ハーズバーグの2要因説』の通りなのでした。積極的な動機づけをする要因と、動機を失う要因(衛生要因)とがあり、後者を解決しても前者になるとは限らないという理論です。ハーズバーグが示す動機づけ要因から4カテゴリーをマトリックスの行に追加し、カテゴライズを修正し22種が残りました。つまり最終的には24x22を点検したことになります。

こうして「個人がやる気を出す方法10選」を選ぶことができました。もし私達が基礎理論を先に何も検討していなかった場合は、そのようなことに気付かなかったのではなかろうかと、半分ゾッとしたのでした。

組織のPMではメンバーの動機づけやソフトスキル面がしばしば議論されます。そういう場合も毎度ゼロから議論するのではなく、心理学の基礎的な理論等をある程度踏まえたうえで自由に議論することが、建設的な結論を得るには大事なことだと思いますが皆さまはどう思われますか?

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個人プロジェクトのステークホルダーは特別に大事

現在、我が家は自治会の輪番制の理事、つまり隣組の班長です。この辺りでは班長の仕事は主婦が行いますが、我が家も同じです。集金、資料配布、回覧、打合せ等で、班内の6戸が1年交代で担当し、近所のアパート2つを含む16戸の区域のお世話をするルールになっています。ただ、アパートには階段があったり集金が難しかったりで、何かと手間がかかるようです。

ゴミ置場の世話は一番大変なので同じ6戸で週単位の当番制です。生ごみの日は満杯となり車が通りにくいほどです。前はノラ猫が興味深そうに遊びにきては宝さがしをしていましたが今は生ゴミには全く興味が無いようです。代ってカラスが荒らすようになり始末に負えませんでしたが、幸い旨い食事が他にあるらしく前ほどは荒らされなくなり皆でほっとしていました。

ところが先日、近所に3階建7戸のアパートが突然出現しました。建設が終りシートが外され初めてそれと分りました。梯子状の階段が巡らされたデザイナーズ・マンションとのフレコミです。なるほどそうみると確かに恰好がいいし、階段がジャングルジムのようで若者向きに見えます。しかし各戸へは全部別々の階段上のドアまで行かないとポストがありません。専用ゴミ置き場もなく満杯の置場に相乗りをされそうでこれはたいへん!

何が建設されるのか掲示されず近所の誰も知りませんでした。アワを食った班長、つまり家内が皆と相談した結果、6戸で団結し自治会へ要望を出すことになりました。「新7戸は自治会別班を作り、ゴミ置き場は専用を用意してほしい」と。情報を遮断されていたステークホルダーの反応は一般的にこうなるわけでしょう。専用ゴミ置き場は作られましたが、他の要望は班長交代後も続けられました。最終的に回覧物置き場が1階に設けられ、集金はず少し遠いですがその大家1軒に行けばよくなりました。しかし後味のよいことではありません。

さて話は変わりますが、パーソナルプロジェクトで関係者の賛同が大事な点は同じことでしょう。例えばビジネスマンが人生の大目的を思い立ち、熱心に取り組み始めたとします。勉強時間は夜なので、家族の団欒を早めに切り上げ部屋にこもり目的へと邁進しようとしますが、なかなかそうはいきません。

最重要ステークホルダーである配偶者をつんぼ桟敷にすると問題が起きます。事前に目的が共有されある程度の賛同が得られた場合には、問題はしばらく出ないでしょう。二人で行うプロジェクトは終盤まで大丈夫でしょう。とにかく、成功するにはステークホルダーの協力が欠かせません。個人の場合、関係者はいつもほぼ同じなのでとくに重要だと思います。

パーソナルPMでのステークホルダー・マネジメントのサイクルは、たいていの場合次のような図で表せると思います(見えにくい時は図をクリックしてください)。

Stakeholder Management

もちろん関係者を識別(特定)し「パワー/インタレスト・グリッド」(横軸を関心の強さ、縦軸を影響力の強さとする平面)で位置付けをし、どうマネジメントするか考えるなどのやり方は、組織のPMの場合と同じです。その次に、自分の掲げる目的が相手の視点ではどんな価値があるか、と考えを巡らせるわけです。

小さな成果を得た時に相手とそれを共有することは何よりも大事だと思います。プログラム中の次のプロジェクトへの支援がより強力になります。協力者自身がやり遂げたという達成感を少しでももってもらえば、さらによい支援が得られる点は次の名言に通じることだと感じますがどうでしょうか。

参考: 悠兮其貴言、功成事遂、百姓皆謂我自然 = 悠としてその言をおもくすれば、功成り事を遂げ、百姓の皆我らが自ら然りと謂わん = 成功した際、相手が自分が参画したからこそ達成できたと思うようにする = When the objective is achieved, his members will say: we did it ourselves. (老子道徳経第17章)

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プロフェッショナルの仕事を真似るには

記事をうまく速く書くにはどうするのかと、それを仕事にしているメンバーの谷島記者に皆で伺ったことがあります。すると「記事は結論から先に書くもので、起承転結のむしろ反対。逆三角形です。」と教えられ、皆で感心したものでした。

なぜなら我々が学校で習ったのは、なんでもかんでも起承転結にすることでしたから。五言絶句やらソナタ形式やら、さらに学科でなくとも4コマ漫画でもなんでも同じパターン。○○の一つ覚えで、仕事に就いてからしばらくはお客様にその順序で説明をし、忙しい相手がイライラしたことが何度もあります。

相手の立場で考えることは、プロフェッショナルの仕事なら常に共通ではないかと思います。さらに、仕事の究極の目的を「お客様の繁栄」に据えることによって、社内事情にとらわれずにお客様のために全力が出せると思います。

しかしそこで役立つ仕事のコツは、全部自分で考え出すよりは、優れたプロフェッショナルに習う方が良いことが多々あります。例えば私の場合、システム作りで「先に業務を徹底的に単純化する」ということを、良い先輩に早く習ったからうまく身につけられたと今でも有難く感じています。他にも習ってはじめてわかったということが沢山あります。習わなければ知りえなかったかもしれません。

一方で、一言で書けるコツはどれも分りやすいのですが、物事をどう進めるかについてはなかなかそう簡単にはいきません。わかる大きさに仕事を分解することで、初めて共有ができます。つまりプロジェクトマネジメントのWBS(Work Breakdown Structure)です。冒頭の記事の書き方を習ったものの概要をここに勝手に示します。どこかに散逸しないためにも。

(もし見えにくい場合は図をクリックしてください。)

記事執筆WBS

このスライドがご本人の伝えたいとおりになっているかどうか、自信があるわけではありません。しかし、こういうことを習っただけで、私たちの記事の書き方はそれ以来、とてつもなく進歩し速く書けるようになったのは間違いないと感じます(しかし、ご覧のとおり教えられたようにできていないのではありますが)。

込み入った活動の模範的なやり方をWBSにして活用することはモダンPMの知恵ですが、個人が良い仕事をするための大事な知恵でもあると思います。皆様のご経験ではどうでしょうか?

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TIME IS LIFE

私は自分の時間を管理するために、長年To-doリストを使っています。ルーチンワーク以外のやることをそこに全部書くのですが、媒体はあるときから紙ではなくなり、表計算ソフトを継続的に使っています。小さなことは先にやってから後でそこへ書くこともあります。それが継続のコツだと思っているからです。

ただ、書いたことを全部やろうとすると、時間の足りないことがあります。予定外の急用や、時間の見積り違いがあったりするからです。作業項目の重要度で色付けをし、どこまで丁寧に深くやるかを調節することで、徹夜をなんとか避けてきました。

ところがそうやってもしばしば限界があります。そんな時は、人に約束した項目を必ず守ろうとしますから、犠牲になるのは自分のTo-do項目です。ずるずると後ろへずれるわけですが、それが癖になると大事な目的がおろそかになります。そのことをズバリと指摘しているのが、アラン・ラーキン(Alan Lakein)です。ラーキンはそういう大事な目的を「A目的」と呼びます。

1970年代後半のベストセラー「タイムマネジメント」(How to Get Control of your Time and your Life)の著者がラーキンで、クリントン元大統領著「マイライフ」のまえがきにもいきなり登場します。クリントンは若い時にその本を読んで人生が変わったと書いています。ラーキンはベンジャミン・フランクリンの”Time is money.”を”Time is life.”と言い換えています。

一般的にA目的の活動を避ける理由は、単に忙しいということ以外にも、そもそも無理な設定をしたとか、決めたがやる気がおきないとか、色々ある点をラーキンは細かく指摘しています。最近改めて気づいて読み直したラーキンのやり方は、私が考えてきたような中途半端なものではありません。優先度の低いTo-do項目を切捨てる(人にやらせる事も含む)とか、2割8割の法則を適用し上位2割以外はやらないとか、私から見るとかなり乱暴にも見えます。しかし根本的にはそういう優先順位付けとA目的への執着・集中は極めて大事なことだと思います。

A目的に手が出ないときには、そこから「インスタント・タスク」を切り出したり、随分早くからそのあちこちをつついて、時間が10分でもあればやっておくという「スイスチーズ法」を使ったりなど、あの手この手を持ち出します。

さて、そういえばそのような「スイスチーズ」の絵をどこかで見たなあと、なかなか思い出しませんでした。あるとき別の用事で、相当昔にマネジメント研修を米国で受けた時の資料を見て驚きました。Agendaの中になんとそのラーキンの講義がはいっていたのでした。講義タイトルではわかりませんが講師は紛れもなくその著者です。気づかなかったのもおかしな話ですが、パーソナルPMが大事だとずっと考えていた潜在意識には、そういうこともあったのかと気づかされました。

時代は変わり、その20年後に実践の知恵であるモダンPMも体系化されてきました。また、現代では技術の進歩で個人の行動記録が自動的にとれる対象も増えました。時とともに繁忙感が増し、パーソナルPMを追究する意義は増していると思います。考え方次第ですが人生はプロジェクトで成りたっており、そういう視点ではLife is projects.とさえ言えそうです。PMの知恵が有益で、そこには形式知としての発展の余地があると思います。ラーキンの知恵も、改めて新しい視点でパーソナルPMに組み込もうと考えます。

パーソナルPMは個人が行うミクロなことであるとも言えますが、偉大な物事は個人の意志から始まるとも言えます。一昨日パーソナルPMコミュニティの80回目の会合を行いました。小さくとも執拗に食いつくウッドピンチを、縁起のよい80回目の参加記念品にしました。個人プロジェクトで作った装置を使って、木に刻印をしたものです。ただの木製洗濯バサミですが。

ウッドピンチ

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走りながら考えるときでも成算をもちたい

人生で使える時間は限られています。そのことを強く意識するのは、中年以後という場合が多いかもしれません。実際私もそうでした。加えて、時代の変化として気づくのは繁忙感が次第に増すという現象です。

年齢による生理学的変化も一因でしょうが、かつてdog yearなる言葉が生まれたように、世の中の変化が実際に速くなっていることも明確な要因でしょう。そこで、Agile PMが適するプロジェクトもあれば、要件を早く固定することが難しいプロジェクトも増えるわけです。

「走りながら考えよ」という言い方にも一理あるといえましょう。ところが、走りながら考えるのは着手が早く進み方が速いと本人が感じても、実際には完了までの時間が長くかかることが多いのに気付いています。To do項目の実行に要した時間を記録するのが私の長年の習慣となっていますので、それがとくに気になっています。

対象にもよるでしょうが、実際、設計なしにプログラムを書くと早くできるように感じても、結果として完了が遅いことが多いものです。ごく最近、設計なしに電子工作をやり、そのありふれた教訓を今更ながらいやというほど味わいました。

同時に、プロジェクトには成算(prospect, self-efficacy)が必要であると思います。たとえ可能性が小さくとも、そういう筋道が全くないならば、ラッキーなときだけ成功ということになりかねません。成算は設計図を書かせる動機づけだと思います。そのような教訓をまとめたいわけです。「生活の知恵」としての教訓も色々ありますが、個人プロジェクトの体系だった知恵にまとめる、つまり構造を伴った形式知とすることが人の役にたつと考えています。そのために私たちはパーソナルPMを体系化する努力をしています。

知恵を人が使える形式知にするには、特定の体系(BOK)や目次に収容する必要があります。PMではそれがPMBOK、ICB(IPMA Competence Baseline)、Prince2、ISO21500、あるいはIPMA傘下の各国PM団体がもつNCB(National Competence Baseline)などです。

個人の領域では、18世紀にはベンジャミン・フランクリンの13徳があり、その後は例えばジェームス・アレンの原因と結果の法則をはじめとする成功哲学や、現代のミクロ組織論に至るまで、様々な知恵が存在します。個人向けの自己啓発や成功哲学の中には、仮説や主張と考えるべきものも見当たります。

モダンPMで重要な点は、多くの実践の積み重ねから集約されたプロジェクトの知恵であることだと思います。そこが主張や仮説とは一線を画すると思います。私たちがパーソナルPMをモダンPMの一領域である形式知として確立したい理由はそこにあります。これを人生の限られた時間で作るのにチャレンジをしているわけです。

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自信は人から与えられ人に与えるもの?

「セルフイメージ」とは自分をどんな人間と思い込むかということだと思います。もし悪い固定観念があれば、それが改善されることが成長の条件であると、会社の人事研修で聞いた覚えがあります。「自信」もその「セルフイメージ」の中に含まれる部分が多いように思われます。

6月と12月に千葉県の老舗の海苔屋からとても美味しい乾海苔が毎年送られてきます。ある出来事以来ずっと続いています。途中で何度かお断りをしてみたのですが、変わらず続いているので、たいへん有難くいただいています。ここで、その経緯をお話します。

40代前半のとき、私は営業所長に任命されました。プロジェクトリーダーで技術者だった私には、いちばん厭な管理職だったのですが、会社の命令であり断るのは無駄な抵抗だとわかりました。

しばらくたったある時、寡黙で仕事熱心な若手セールスマンが、家業を継ぐという理由で辞表を出したと伝えられました。若手のホープとして私は大いに期待していた社員なのでとても驚き慌てました。他の社員に聞くと、どうやら私の配下の課長が何かにつけ彼をひどく叱責し、本人が自信をなくしたというのも一因のようです。たいへんなことになりました。

その社員の自宅へ駆けつけ本人に会い話を聞きました。そしてお店で働いていた親父さん(社長)を呼んでもらいました。この社員がいかに有能な人材で、会社がいかに期待しているかということを、具体例を挙げて全力で親父さんに説明しました。そして家業を継ぐのは20年ぐらい待って欲しいと懇願しました。

親父さんは考え込んだあと、重い口を開きました。「倅が会社にそんなに期待されていたとはつゆ知らず、たいへん申し訳なかった。それを聞いてとても嬉しい。だが先週決めてしまったことで、残念だがもう取り返しがつかない。」 実に残念なことです!社員は私の隣で涙を流していました。

見込んだ社員を引き戻したい一心で行ったことが、彼に大きな自信を取り戻させたことは、鈍感な私にもすぐにわかりました。数年後、その老舗で働いていた彼の結婚式に招かれ祝詞を述べました。その後お子様が誕生しすくすく育っているという手紙をもらい自分のことのように嬉しくなりました。その後彼は船橋のその大きな老舗を継ぎました。それ以来海苔を送ってくれているのです。

これだけですとなんの変哲もない話になるかもしれません。しかし、一般管理職に全く自信のなかった私が、部下に自信をもたせることができたのに気付いたのです。このことが逆に、自分の固定観念となっていた管理職としてのセルフイメージを変えたのに気づいたわけで、一般管理職に少し自信がつくきっかけになった出来事でした。

つまり、自信が持てたことに感謝すべき側は、こちらでもあったわけです。人に自信を与えることで、自分に自信がつくという大事な事実に気づきました。それからは、不器用ながらも人に自信をもたせることを時々考えるようになり、相互に自信を増す現象があることに確信をもちました。そこをLessons Learnedとして伝えたいわけでした。もちろん自信の種類によることかもしれません。ご意見をお待ちします。

セルフイメージがいかに他人に影響されやすいものであるかという一例でもあると思います。加えて、他人に影響されて固定観念となってしまっている自分自身の悪いセルフイメージは、払拭できるということの証しでもあります。ごく最近になって、Wayne Dyersという人の書籍に出会い、そのことを改めて思い出した次第です。

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くそ忙しいのにどうして旅行なんかできるの?

私は短くとも半年以上先までの日程表を携帯します。というと、「手帳をもてば当たり前では?」という方もおられます。しかし年末で区切ることもなく、わかっている限り先の方までの予定を書いて持っているという意味です。それがなぜ役立つのかをここで説明したいと思います。

その昔、世の中にSEがあまりいなかった頃ですが、東北へ赴任しだんだん忙しくなりました。大小16件ほどのお客様を常時担当する羽目になりました。良く言えば引っ張りだこ、悪く言えば過重労働、人からワーカホリックと言われたりしました。仕事ですから仕方がないのですが、土日も潰れることが多くなりました。そういう状態ではどうすれば自分の時間が作れるかが一番の課題であることは、どなたにもご経験がおありでしょう。

担当地域が広いので主に夜行列車で動く毎日でした。がらがらの車内で仕事をするほかに、時間を作る方法も色々と考案していました。今ならGTD(Getting things done)や段取りのハウツー本もあるし、Webでも有益な情報に事欠きません。しかし当時気づいた参考書は、二宮尊徳、フランクリン、新井白石等々の伝記程度でした(私の場合だけかもしれませんが)。とにかく自分で色々工夫を加えなければいけません。

私がたどり着いた一番良い解答は、簡単に言うと誤解を招きそうではありますが、お客様の優秀な人達をどう「使い」まくり、達成感をもってもらうかでした。そのことは別途書くとして、ほかに上位に位置づけられた解答が、「先の方までの日程を書いて持つ」ことです。それを始めてから、その後ずっとですが、今でもその習慣がたいへん役に立っています。

当時他人から見た仕事バカは、当然ながらますます忙しくなり、その後マネジメントの仕事が増えました。しかし一番忙しい時も家族旅行を欠かした年はありません。どうしたのかといえば、日程表に仕事と同様に早くから旅行の予定を入れて死守するわけです。上司や周囲にもそこはダメと早くから言うわけです。なんだ、そんな単純な解答かと思われるでしょう。しかしこれには色々な余禄があるのです。

第一に、先の方の仕事を明確にしておくことで、自分がさらにこなせる仕事量が分りやすく、できない約束をせずに済むこと。第二に、先の方の仕事が明確ならそれにちょっとでも手を付けておけること。とくに意識しなくとも、早くから内容をどうするか少しずつ考えていることです。また、わずかでも着手をしておくことは、後でその仕事に取り組む際の動機づけになります。何でも手を動かすことで初めて興味が湧くものですから。第三には、行動全体が計画的になり、無駄が少なくなる事です。ちょうどプロジェクトがプログラムを構成する一部分であったり、目標が目的のマイルストーンであったりするのとよく似ています。

つまり、できるだけ先の予定まで書いて持つことは、仕事をうまくこなすための良い助けとなるだけでなく、自分の時間を作るための武器にもなるというわけです。

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パーソナルPMのフレームワーク

パーソナルPMのフレームワークを下に掲載してみます(あれ、画像がちょっとボケますかね。画像をクリックしていただくと鮮明なのが出ます)。

私は、その昔自分のTo-doリスト項目が完了した時に、気づいたことを項目の右にちょこっとメモするのが習慣になりました。自分用なので一言だけなのですが。数年やっていると、同じ気づきが何度も出るのがわかりました。同じことを何度も書かないようカテゴリー化しまして、自分専用のチェックリストの目次にしたつもりでした。つまりこの表の「活動」の右側には、私の場合いろんなLLが自分専用のひとことで色々溜まっています。それを他の人が分るように今後書きたいと思っています。

そういうわけで、パーソナルPMのフレームワークはこう分けなければならないというわけではなく、自分用に10年続けた結果がこうなったというものですから、人によって異なることがあって当然かもしれません。たまたまそれを5年前にフレームワーク例として、現在のパーソナルPMコミュニティの皆さんに提案した結果、次のような表に落ち着いてきたものです。今回皆さんがたくさん投稿される内容によっては、必要があればこのフレームワークも更新したいと考えています。

この表にある「知識」の内容は、組織用のPMと重なるものがありますが、個人のPM独特の内容もあります。これをどういう風に見て使うとよいかについては、今後どこかでまた書くとして、色々ご想像いただくとよいと思います。色んな知恵を溜めたり参照したりするには、何か目次があると便利ですね。BOKと呼ばれるものも同じような理屈があるわけすが。まずはとにかく掲載まで。

(掲載されていたのは2015年版でしたので2025年10月の状態に更新します:

お客様のトップと良い関係を作るには借りを作る?

プロジェクトリーダーのメンタリングを行う機会が時々あります。そこではPM(プロジェクトマネジメント)の知恵に加え、スポンサーとの良い関係をどう作るかについて、自分のLL(Lessons Learned)を持ち出して参加者に考えてもらうことが多くなりました。過去にお客様と接する第一線の仕事を長年やっていましたので、そこでいろんな知恵をいただき、自分なりに咀嚼してきましたが人に披露するような機会はあまりないものでした。

ところが複数の大学院でPMを教えるようになると、ステークホルダー・マネジメントの経験談をたくさん聞きたいというフィードバックが多いのに気付きました。そこでそういう知恵をネタにいれることがだんだん増えて来ました。もちろんやりすぎると、「年寄りの自慢話」として嫌われることは間違いないですから、ほどほどにはしています。そういう中から「顧客へのペネトレーション」、とくにお客様の上層部をどうやって味方につけるかという点のLessons Learnedです。

SE時代に色んなお客様のシステム構築プロジェクトをやっていました。相当昔ですし地方でしたから、SEは珍しいしお客様チームの中のリーダー的存在でした。しかし、一介の若僧の言うことが、お客様の中の関連部門長などに簡単に受け入れてもらえるわけではありません。もし聞いてもらえないとプロジェクトが失敗するというような場面も何度も起きます。そこで、お客様のキーマンやトップを味方につける必要がどうしてもあったものです。

そしてお客様トップとの定期的会合をどこでもお願いするようになりました。そんな機会で某社にお伺いしたある日のこと、K社長が「今日は相談があるのでお酒でも」とのこと。社長車でフグ料理屋につれていかれました。地元の名士ですから料理屋のご主人の対応はこの上なく丁寧です。トイレをお借りしご主人に「大ごちそうになりどうしたものか」と聞いたら、即座に耳打ちしてくれました。「お客さんは若いのだから偉い人には素直にごちそうになるもので、決して払ってはいけません。借りを返すような良いお仕事をしてください」。

そう言われて気付きました。当然ながら20代の若僧がお支払できるようなお店ではありません。借りを作ったのですが、K社長には「貸しは仕事で返してくれる相手だろう」という期待があるのです。期待に応えられるように頑張っていると、その後K社長に奢られる機会はどんどん増えました。それにしたがって、組織では自然な現象ですが、お客様の上層部の方々の多くが私の意見に従ってくれるようになったのです。

このことは他のお客様でも同じです。社長に限らずお客様の目上の方と接する場合には、そのような借りを作ることです。地方赴任から戻り大企業を担当した際でも同じことが起きました。この原理は、時代を経ても他の国であっても同じだと思います。割り勘などしてはいけません。若い人たちにこれを得意になって話したその夜のこと、私はすっかり奢らされてしまいました。

パーソナルPM忍法帖

「パーソナル・プロジェクトマネジメント」は個人のプロジェクトマネジメントのこと。日本生まれで2005年ぐらいからまとめられてきて、その知識を整理するパーソナルPMフレームワークも整ってきました。普通のPMでいえば知識体系の目次。このBlogでもそのうちにご紹介したいと思いますが、お急ぎの方の参考書は日経BP社の「パーソナルプロジェクトマネジメント」です。

パーソナルプロジェクトマネジメントの研究は日本で2004年以前から始まり、個別の情報発信が始まりました。2007年4月には「パーソナルPM研究会」がPM学会内に作られ、継続的な追究が開始され研究が加速されました。そして2014年5月には、ご関心をもたれた関係各位のご努力により、自由な追究・実践のための「パーソナルPMコミュニティ」が学会外に誕生しました。いっぽうパーソナルPM研究会の2016年3月完了に伴い、以後この開かれたコミュニティ活動(参照:PPMcommunity-TsCs-01)へと活動が統合され、現在に至っています。つまり「分身の術」と「合体の術」を重ねたものです。

本ブログはワールドクラフト様のお世話になりながら掲載させていただいています。当面はLessons learned(教訓)をメンバーが忍法のようにあれこれ書いて行く筈です。ご関心をお持ちの方のお役に立つように、一同頑張りたいと思います。・・と述べる筆者本人は、ゆっくりのペースで書くことになると思います。事情で暫らくの間、時間が拘束されているためですが。しかしそういうことは理由になりにくいものですね(^_^: 書いてしまってから反省しきりです。

2015.3.6

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