自信は人から与えられ人に与えるもの?

「セルフイメージ」とは自分をどんな人間と思い込むかということだと思います。もし悪い固定観念があれば、それが改善されることが成長の条件であると、会社の人事研修で聞いた覚えがあります。「自信」もその「セルフイメージ」の中に含まれる部分が多いように思われます。

6月と12月に千葉県の老舗の海苔屋からとても美味しい乾海苔が毎年送られてきます。ある出来事以来ずっと続いています。途中で何度かお断りをしてみたのですが、変わらず続いているので、たいへん有難くいただいています。ここで、その経緯をお話します。

40代前半のとき、私は営業所長に任命されました。プロジェクトリーダーで技術者だった私には、いちばん厭な管理職だったのですが、会社の命令であり断るのは無駄な抵抗だとわかりました。

しばらくたったある時、寡黙で仕事熱心な若手セールスマンが、家業を継ぐという理由で辞表を出したと伝えられました。若手のホープとして私は大いに期待していた社員なのでとても驚き慌てました。他の社員に聞くと、どうやら私の配下の課長が何かにつけ彼をひどく叱責し、本人が自信をなくしたというのも一因のようです。たいへんなことになりました。

その社員の自宅へ駆けつけ本人に会い話を聞きました。そしてお店で働いていた親父さん(社長)を呼んでもらいました。この社員がいかに有能な人材で、会社がいかに期待しているかということを、具体例を挙げて全力で親父さんに説明しました。そして家業を継ぐのは20年ぐらい待って欲しいと懇願しました。

親父さんは考え込んだあと、重い口を開きました。「倅が会社にそんなに期待されていたとはつゆ知らず、たいへん申し訳なかった。それを聞いてとても嬉しい。だが先週決めてしまったことで、残念だがもう取り返しがつかない。」 実に残念なことです!社員は私の隣で涙を流していました。

見込んだ社員を引き戻したい一心で行ったことが、彼に大きな自信を取り戻させたことは、鈍感な私にもすぐにわかりました。数年後、その老舗で働いていた彼の結婚式に招かれ祝詞を述べました。その後お子様が誕生しすくすく育っているという手紙をもらい自分のことのように嬉しくなりました。その後彼は船橋のその大きな老舗を継ぎました。それ以来海苔を送ってくれているのです。

これだけですとなんの変哲もない話になるかもしれません。しかし、一般管理職に全く自信のなかった私が、部下に自信をもたせることができたのに気付いたのです。このことが逆に、自分の固定観念となっていた管理職としてのセルフイメージを変えたのに気づいたわけで、一般管理職に少し自信がつくきっかけになった出来事でした。

つまり、自信が持てたことに感謝すべき側は、こちらでもあったわけです。人に自信を与えることで、自分に自信がつくという大事な事実に気づきました。それからは、不器用ながらも人に自信をもたせることを時々考えるようになり、相互に自信を増す現象があることに確信をもちました。そこをLessons Learnedとして伝えたいわけでした。もちろん自信の種類によることかもしれません。ご意見をお待ちします。

セルフイメージがいかに他人に影響されやすいものであるかという一例でもあると思います。加えて、他人に影響されて固定観念となってしまっている自分自身の悪いセルフイメージは、払拭できるということの証しでもあります。ごく最近になって、Wayne Dyersという人の書籍に出会い、そのことを改めて思い出した次第です。

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