私は短くとも半年以上先までの日程表を携帯します。というと、「手帳をもてば当たり前では?」という方もおられます。しかし年末で区切ることもなく、わかっている限り先の方までの予定を書いて持っているという意味です。それがなぜ役立つのかをここで説明したいと思います。
その昔、世の中にSEがあまりいなかった頃ですが、東北へ赴任しだんだん忙しくなりました。大小16件ほどのお客様を常時担当する羽目になりました。良く言えば引っ張りだこ、悪く言えば過重労働、人からワーカホリックと言われたりしました。仕事ですから仕方がないのですが、土日も潰れることが多くなりました。そういう状態ではどうすれば自分の時間が作れるかが一番の課題であることは、どなたにもご経験がおありでしょう。
担当地域が広いので主に夜行列車で動く毎日でした。がらがらの車内で仕事をするほかに、時間を作る方法も色々と考案していました。今ならGTD(Getting things done)や段取りのハウツー本もあるし、Webでも有益な情報に事欠きません。しかし当時気づいた参考書は、二宮尊徳、フランクリン、新井白石等々の伝記程度でした(私の場合だけかもしれませんが)。とにかく自分で色々工夫を加えなければいけません。
私がたどり着いた一番良い解答は、簡単に言うと誤解を招きそうではありますが、お客様の優秀な人達をどう「使い」まくり、達成感をもってもらうかでした。そのことは別途書くとして、ほかに上位に位置づけられた解答が、「先の方までの日程を書いて持つ」ことです。それを始めてから、その後ずっとですが、今でもその習慣がたいへん役に立っています。
当時他人から見た仕事バカは、当然ながらますます忙しくなり、その後マネジメントの仕事が増えました。しかし一番忙しい時も家族旅行を欠かした年はありません。どうしたのかといえば、日程表に仕事と同様に早くから旅行の予定を入れて死守するわけです。上司や周囲にもそこはダメと早くから言うわけです。なんだ、そんな単純な解答かと思われるでしょう。しかしこれには色々な余禄があるのです。
第一に、先の方の仕事を明確にしておくことで、自分がさらにこなせる仕事量が分りやすく、できない約束をせずに済むこと。第二に、先の方の仕事が明確ならそれにちょっとでも手を付けておけること。とくに意識しなくとも、早くから内容をどうするか少しずつ考えていることです。また、わずかでも着手をしておくことは、後でその仕事に取り組む際の動機づけになります。何でも手を動かすことで初めて興味が湧くものですから。第三には、行動全体が計画的になり、無駄が少なくなる事です。ちょうどプロジェクトがプログラムを構成する一部分であったり、目標が目的のマイルストーンであったりするのとよく似ています。
つまり、できるだけ先の予定まで書いて持つことは、仕事をうまくこなすための良い助けとなるだけでなく、自分の時間を作るための武器にもなるというわけです。
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