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PM実践力向上は、身の回りの身近なテーマから

個人の場合、身の回りに身近なプロジェクトが存在します。しかも対象領域が広くプロジェクトマネジメント(以降PMと呼ぶ)実践力向上の訓練としてはうってつけです。

組織のPM例えば新製品開発の場合は、期間が一年から数年に及びますが、個人の場合、期間は数日から数週間、長いもので半年程度です。よって個人PMの場合、短期間に成果や反省点が浮き彫りになり次回へフィードバックが迅速にできます。PMの視点で考察しますと新製品開発が顧客や会社の経営陣、個々の職能の責任者、プロジェクトメンバー間とのコミュニケーションにかかるウェイトが高いのに対して個人の場合、自身の動機付けをどのように高められるかという点が大切だという点が異なります。

新製品開発プロジェクトを成功するためには、PMの研修を受けて、組織のPMに活用することもありますが、研修の内容をそのまますぐに現場で役立たせるには、難しい点があります。大抵、リスクの影響が大きく失敗が許されないケースが多くあるからです。また同様のプロジェクトを経験するという方法があります。しかし新製品開発のプロジェクトは期間が長く、また業界特有の知識の習得にも時間がかかり、一連のPMの実践経験という点では必ずしも十分ではありません。そこで個人PMによって自身のマネジメント力の強化を実践し、上記のような違いを認識し組織PMに必要なプラスアルファ部分を補うというやり方があります。身の回りのテーマで個人PMとして意識し、To-Doリストの活用、中長期の目標や直近の目標設定、WBSの展開、スケジュール、コスト、リスクマネジメント、Lessons Learnedの記録といった点などPMとして必要な要素の体得を繰り返すことです。

新製品開発において、プロジェクトはプロジェクトマネージャーのもと企画部門、営業部門、技術部門、調達部門、工場等各職能部門の代表から構成される横断チームで構成されます。更に各職能部門においても、数人また数十人からなるメンバーがプロジェクトに関わっています。このように新製品開発プロジェクトを分解すると究極は個人です。身近なテーマで個人PMによるWBSの検討またはTo-Doレベルのタスクの洗い出しによる訓練が、新製品開発に役立ちます。新製品開発では、職能部門内外のまとまりとして統合WBSとして管理します。個人のPMに加えて、統合のマネジメントやコミュニケーションを意識し業界固有の関連知識を追加すればよいのです。

プロジェクトのサイズに関わらず、PMの基本は変わりません。 PM実践力向上は、身の回りの身近なテーマにおいて個人PMとして経験を積み上げる方法が最も効果的です。

© 2015Mitsuhiko Tokunaga, All rights reserved.

GTDのフェーズに従ってTo-Doリストの活用を点検

個人のプロジェクトマネジメントにおける段取りとしてTo-Doリストの活用があります。To-Doリストは、文字通りやらなければいけないことの一覧であり個人にとって身近なPM手段です。他人に対する「約束を守る」ことはもちろん、自分自身に対する「約束を守る」ことにも役立ちます。

To-Doリストの活用に密接に関連するものとして、GTDの手法があります。

GTDとはGetting Things Doneのそれぞれ単語の頭文字をとったものです。David Allen発案による仕事を成し遂げる為のタスクマネジメントの手法であり、世界的にベストセラーとなっています。基本は「なすべき仕事のリスト」を何かに記録しておくことで、頭の中から「なすべき仕事のこと」を追い出すこと。その結果、頭の中はすべき仕事全部を覚えなくてもよくなり、すっきりとリストに基づき実際の仕事をこなすことに集中することができるのです。

GTDは五つのフェーズから成り立っています。まず収集、頭の中にある「やらなければならないこと」「気になっていること」を書き出す。二番目に処理、次に取るべき行動を決める。三番目、整理、プロジェクトとして取組み、カレンダーへ盛込み、空き時間に対応、連絡待ちといったカテゴリーに分ける四番目見直し、「次にとるべき行動」リストを毎日見直す。五番目実行、リストアップした「出来ること」の優先順位を考慮し行動に移します。

GTDにおいて43Foldersという考えがあります。一か月31日と一年12ヶ月の数字を足した数字のフォルダーを用意し、管理する考え方である。いつやるかということが明確になり、整理することが習慣になると大きな効果が発揮できます。

GTDのフェーズに沿って、自身のTo-Doリストの活用について振り返ります。最初に直近の仕事や生活に関するTo-Do項目の案出しを行います。中長期としてやりたいことを頭に浮かべることも必要です。次にTo-Doリストへ盛り込み、日々更新します。一か月以上先の予定はカレンダーへ盛り込みます。To-Doリストへ無い項目で実施したものは、後付けでTo-Doリストへ盛り込みます。一週間単位で振り返りますと、いろんなことができたという達成感を味わうことができます。三番目のステップとしてTo-Do項目個々の重要度、緊急性(期限)、時間見積もり、一週間以内で対応できるものかそれ以上かかるものか見極めます。時間のかかるものはプロジェクトとして意識し、別シートでWBS(Work Breakdown Structure)を作成して取り組みます。一週間以内の直近To-Doリストおよび数ヶ月先のものまで見通します。隙間時間ができたときに先にやるべきことが頭にあれば、少しでも前倒しで対応することができます。四番目のステップとして朝一、仕事に取り掛かる前の数分間を活用し自身で見直しを行い、完了したリスト項目を色塗りで消してゆきます。消すことによって、完了できたという充実感を味わうことができます。そして次のアクションが必要なものがあれば追加していきます。最後にTo-Doリストの期限、見積もった時間を意識して実行します。時間が余れば、To-Doリストの期限が先のタスクやカレンダー上に記載あるタスクも前倒しで着手し、時間の貯金作りができます。

To-Doリストを活用することで、直近一週間のやるべきことが明確になり、仕事や私生活で他の人との約束を守ることはもちろん、自身でやるべきことに対して漏れや忘れることがほとんど無くなりました。

ただ、自身の反省点として、カレンダーに記載したものが、To-Doリストへの記載が漏れたことがあり、大事な会議や自身の成長に繋がるセミナー等欠席といった失態を発生したことがあります。カレンダー上に記載したものも、必ず直近になると、To-Doリストへ記載を忘れずにすることの大切さを痛感しました。To-Doリストの活用がうまくやれるようになると「忙しい」という言葉を発する機会が少なくなります。

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目標の上位に目的があることを意識する

目標達成できなかったとき、その原因を探ると、何のためにするか目的がはっきりしないことがあります。辞書(デジタル大辞林)によりますと、目的は「実現しようとしてめざす事柄、行動のねらい、めあて」であり、目標は「そこに行き着くように、またそこから外れないように目印とするもの」です。マネジメント理論の中では「目標について活動の目的や課題に期間と到達レベルを加えたもの」と表現されています。目的を意識し達成可能な目印として目標をかかげ、着実に達成を積み上げてゆくことが効果的です。

自身が取り組んだ事例を二つ紹介します。ひとつめはメタボリックシンドローム診断によってメタボ予備軍と診断され、課題として取り組んだことです。目的は「生活習慣を見直し健康的な身体づくりを目指すこと」としました。最初に達成可能な短期目標として「体脂肪を削減するための減量」に取り組みました。当面の目標に集中して意識し「減量」を数ヶ月で達成しました。短期目標としての減量の目標を達成した後、目的を改めて認識したこともあり、標準体重の大切さを認識し「体形維持」に取り組みました。また生活習慣の改善が必要ということに気づき、よりよい「生活習慣の定着」といった意識改革に取り組みました。

一年後の定期健康診断の時には、メタボ予備軍からは脱出することができました。その後ほっとしたせいか、油断があり一年毎に1kgずつ体重が増え血圧の値も状態を維持することはできませんでした。再度、前記目的を意識して「減量および血圧対策」の取り組みを開始しました。日々一万歩を歩く目安とし階段の利用を心がけること、加えて早足での大股歩行をすること、更に食事面の改善です。健康寿命にとって小食(節食)がよいので、今まで満腹感が得られるまで食べていたことを改め腹八分にすること。また体調を整えることに効果がある食物繊維を豊富に摂取すること。更に発酵食品のさまざまな有用性を考慮して積極的に摂取することにしました。もともと少量で赤くなるタイプのためアルコールはコップ一杯程度におさえるといったことも心がけました。本ケースで目的を意識せず、ダイエットのため、数キログラムだけの減量だけを目標としていたら、その目標だけを達成し満足して時間がたってからリバウンドして元の体型に戻り、後で何のためにダイエットしたのだろうかと思っていたに違いありません。

もうひとつ事例を紹介させていただきます。定年後の生活を考えている50歳代の方に特に関係あるテーマです。会社の年金制度が確定給付型から確定拠出型となり、会社の保障から個人の自己責任による運用へと変わることになりました。年金も2014年4月以降60歳を迎えた方より61歳以降に2年毎に公的年金の受給開始が遅れることにより、60歳以降考えると資金運用を含めたお金に関する知識の必要性を痛感しました。更に会社での休日を利用したライフスタイルセミナーを受講したこともきっかけとなり、お金に関する知識が必要だということを強く認識しました。

そこで「お金に関する知識の習得」ことを目的としAFP(Affiliated Financial Planner)資格取得を最終的なゴールとしました。ファイナンシャルプランナー知識はライフスタイル・資金運用・税金・リスク(この場合は保険)相続等幅広い知識が必要とされます。生活に密着し、これからの人生設計に必要だという認識を持ったことも目標として目指した要因です。一挙にAFP資格取得を目指すのではなく、目標の構造化によりゴールを目指すこととしました。最初の短期目標はファイナンシャルプランナー3級資格取得、中期目標としてファイナンシャルプランナー2級資格取得、AFP認定研修終了後最終的にAFP資格習得することを目指しました。

一気に最終のゴールを目指すのではなくその道筋を考え、そのステップとして実現可能な目標を設定し積み上げていく姿勢が、結果として無理なく目的の実現に結び付きました。本ケースでは、いきなりAFP資格を目指すというやり方も考えられますが、集中した勉強時間の確保、やる気の継続、費用の確保といった課題があります。

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ペース配分にアーンドバリューマネジメントを使う

個人にとって最も大切なリソースは何でしょうか? それはまぎれもなく時間です。人生は有限ですから。個人にとっては同時進行するタスクやタスクより込み入ったプロジェクトが常時、小さいものから大きいものまで存在します。数分で対処できるものから百時間以上かかるようなものまでまちまちです。 複数の目標を同時に達成するためには、個々のタスクやプロジェクトの時間を見積もり、期限を意識して対処する必要があります。そして同時進行するタスクやプロジェクトの時間割り当てや重要性や緊急性を考慮し進捗を確認しなければなりません。手っ取り早いのは To-Doリストを定期的に更新することです。ただし時間のかかるものに対して、To-Doリストの更新だけではうまくいかない場合があります。特定のタスクまたはプロジェクトへのめり込み、ペース配分を把握できずに、結果として他のタスクまたはプロジェクトを犠牲にしてしまうことにもなりかねません。最悪のケースは途中で中断に追い込まれることです。このような事態を防ぎ、最後までやりきるためにも、きめ細かい定量的な進捗管理が求められます。

その解決方法のひとつとしてアーンドバリューマネジメントの手法があります。

アーンドバリューというと馴染みが無い方が多いと思いますが、計画に対する出来高の考えを取り入れた進捗管理手法です。ある学会での「研究発表大会」の準備という個人のプロジェクトを例に説明します。発表用の原稿(数ページ)と当日の発表のプレゼンテーションシートがアウトプットになります。

まず、原稿用の章立てとプレゼンのページ構成を決め、そこから初期のWBS(Work Breakdown Structure)を作成します。その後WBSについて自身で遂行を重ね、章立て毎にかかる時間を見積もります。次に日程に落とし込むために、一週間毎にそのWBS に予測時間を割り振ります。それで計画は完了です。その後、一週間毎に計画見合いの成果に対して、実際かかった時間は何時間か帳票に記入するだけです。予め計算式を埋め込んだ帳票を用意すれば、一週間単位で計画の値(PV、Planed Valueの略)、原稿の場合の章立て毎の出来高(EV、Earned Valueの略)またはプレゼンシート一枚毎の出来高(EV)、実際かかった工数この場合は時間(AC、Actual Costの略)を埋めることで、現状の進捗や予測値が自動的に表示されます。

個人プロジェクトにとって、いつ完了しそうかということは気になる点です。アーンドバリューマネジメントの手法を使うと、勘に頼らないで完了日を予測することが可能です。

このようにTo-Doリストの中で時間のかかるものに対して、アーンドバリューマネジメントの手法を取り入れると、ペース配分を考慮して実施することができます。その結果、同時進行するTo-Doリストの他の項目への悪影響を防ぐこともできます。前記研究発表準備の事例では、プロジェクト期間の途中で、計画見合いの出来高(EV)の遅れが自身、把握できましたので、早めに土日に時間の確保を行って、遅れを取り戻したことにより研究発表当日の二週間前までに完了できました。余裕を持って当日を迎えることができたことにより、他のTo-Doリストへの対応も確実に行うことが出来ました。アーンドバリューマネジメントを使わなかったら、研究発表の当日までにという期限だけが頭に残り、後ろから線引きしてしまい研究発表の当日の数日間は頭がいっぱいで、他の事はおろそかになってしまっていたに違いありません。またアーンドバリューマネジメントを使用しますと、途中で進捗を確認しながら進められますので目標の達成までの距離を掴むことができ、頑張ろうと意欲が沸きます。

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個人プロジェクトの成功の為に、全体像を掴み、事前に検討すること

よく、皆さん、プロジェクトの計画が大事ということを、先輩社員から聞いたことありませんか?

例えば、自身の場合、プロジェクトの終盤で、課題が露呈して、なんで、計画の段階で、検討しておかなかったのかと言われたことがあります。

ただ、計画の段階での検討が大事だということを、知識として、または大きな失敗の経験から、計画の段階で、検討が大事だということを認識することでしょう。

計画の段階で、検討することの前に全体像を把握することが、真っ先に取り組まなければならないでしょう。その為には WBS(Work Breakdown Structure)を作ることが、一見 面倒に見えますが、最も効果的です。

WBSはプロジェクトの全体を成果物まで細分化し、階層的に展開したものです。新製品開発など組織のプロジェクトではWBSを作るとき、チームメンバーや経営層といったスポンサー、その他ステークホルダー例えば部門責任者なども参加させ、プロジェクト作業を明確に定義します。新製品開発の場合、構想・計画段階で、全体像の検討不十分のため初期のWBSが更新されずに計画として使用されると、見積もり精度が悪くなります。あれもこれも検討不十分だったと後半に露見し、大きな影響が出ることにもあり得ます。開発費が3倍以上に膨れ上がることや、出荷日程が数か月遅れ製品としての価値が半減することなどです。

WBSは、組織プロジェクト向けと思われているかも知れませんが、個人のプロジェクトにおいても、効果を発揮します。また、組織の場合は、プロジェクト内外のメンバーとの共有化することもあり、ツールも限られていますが、個人にとっては、ツールの習熟に時間をかける必要はなく、身近なものです。

WBSの形は、階層構造が明確にわかる組織図のようなもののほかに、A3やA4、1枚程度の表の形などあります。

以下、自身の個人旅行の事例を述べます。

旅行ハンドブックを基にして訪問したいところをピックアップし、初期のWBSを作成します。その後、時間が経つにつれて、漏れが分かってきたり、あの場合どうするかという疑問が沸いてきます。旅行先に詳しい方のアドバイス聞いたり自分で繰り返し調べたりします。疑問点を解消しながら、WBSを更新していきます。天気が良くない場合の対応やら交通手段が無いといったリスクに対しての対応も頭の中であれこれシミュレーションすることができます。

WBSを更新するにつれて、スケジュールが明確になり、かかる費用の見積もりがより細かくできるようになります。WBSを作成することでプロジェクトの全体像が徐々に明確になってきます。自身の個人旅行のケースでは、限られた予算と夏休みの間という制約の中でパック旅行では味わえない異文化を肌で感じることが出来ました。是非、皆様もステークホルダーの協力を得て、WBSを作成しましょう。プロジェクトの成功は全体像を掴み、事前に対応を検討しておくことにかかってきます。

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