きっかけが何であろうと何でもやってみよう。色々な経験が人生を豊かにする

その日は12時に学校正門傍の駅につきました。いつも通りまず掲示板を覗きにいった私は、張り出されたある掲示にくぎ付けになりました。そこには以下のような事が書かれていたからです。
・3月XXから3泊4日 NNスキー場にてスキースクールを実施する。
・参加費用は・・・・円(朝食・夕食、スキー講義費用含む)
・募集人員20名(定員になり次第締め切り)
そして最後の次のくだりが私の目を引いたのです。
「本スキースクールに参加した学生には体育の2単位を付与する。申し込みは、学生課まで (以上)」
私はその年、体育を選択していましたが、出席日数が足りずに既に単位取得を諦めていました。体育は出席さえすれば簡単に取れる楽勝な授業なのですが、ついつい友達との付き合いが優先して、気が付けば最低限の出席日数を割り込んでしまいました。また来年一からやり直しかと思い少々憂鬱だったのです。そこにこの掲示です。天の救いです。私はその足で早速学生課に出向きました。そこには私と同じような訳ありの学生が数人並んでいました。目の前で定員にならないかとひやひやしていましたが私の番が回ってきて、何とか滑り込めたようでした。千葉県の温暖な気候の中で育った私は、それまで雪国とかスキーとかには全く縁のない生活を送ってきました。実はこの一件が、私がスキーを始めたきっかけとなったわけです。

まずは恰好からと、新宿の三越のバーゲンでスキーウェアとかいろいろ買い込みました。スキー靴も店員の口車に乗せられて買ってしまいました。当日は夜行列車で、そのスキー場のある駅、たしか北陸方面だったと思いますが、につきました。まだ外は暗くスキー場行のバスが出るまでは待たねばなりませんでした。南国育ちの私にはあまりにも寒いので駅のダルマストーブに張り付いて暖を取りました。なんか焦げ臭いと思ったら、買ったばかりのウェアがストーブに触れていてその部分に丸い穴が開いてしまいました。大失敗です。そんなこんなで、生まれて初めての3日間の特訓スキーが始まりました。しかしこれを乗り切れば単位が取れるの一心でした。教わったのは、いわゆるボーゲンという足を八の字に開いて滑ったり止まったりするスキーです。3日目の昼過ぎには、ほどほど急な斜面でもなんとか自力で降りられるくらいに上達したと本人は思っていました。そして無事に終了しめでたく体育の単位を取ることが出来ました。

しかしそれ以上に私はすっかりスキーに魅了されてしまったのです。私のスキー大好き人生が、そこから始まったのです。年取ってから始めるスキーですが、早くゲレンデを自由に滑りたいという目標もできたわけです。ボーゲンならばある程度滑られるという自信がありましたが、本格的にかつ速攻的に上達したいという思いから友達の伝手で知ったプロスキースクールに通いました。そこはパラレルスキースクールと銘打ち初心者でもはじめから足を揃えて練習するのです。本当に初めての生徒のためには、すり鉢状になった練習ゲレンデが用意してありました。直滑降で滑っても最後は自然に止まれるのです。そのスキースクールには4年生になった翌シーズンから、3~4シーズン延べ7回くらい通いました。その結果4年後には、一端のスキーヤーになることができました。

この体験から私が学んだことは、嫌なことや、与えられた仕事でも、そこから自分の何かを見つけることができるという教訓です。それまで、興味すら感じなかった雪の世界を知ったことで大げさに言えば人生観が変わりました。この教訓を飛躍させれば、自分の知らない世界には、どんどん飛び込もう。きっと君の人生は豊かになるよ。ということです。

振り返ると、私も色々なことに興味を持ち、色々な事に積極的になったのは、この頃からのような気がします。還暦を過ぎた今でも年に一度は嫁さんとスキーに行く。それが私の楽しみの一つになっています。ちなみに嫁さんは私の6回目のスキーシーズンにゲレンデで巡り合った女性です。
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