小林誠の講演を聴いて

筑波大学の大講堂で講演がありました。講演者は高エネルギー物理学研究所の小林誠先生です。先生は2008年に小林・益川理論でノーベル物理学賞を受賞しています。なんでも、クオークが6つあるということを理論的に予言し、その後の実験で証明したそうです。「対称性の破れの理論」ともいうそうです。
自宅から車を運転し、15分ほどで会場に着きました。大講堂は満員で、門外漢の私には少し敷居が高く感じられましたが、張り切って最前列の席に座りました。
紹介のあと演壇に立った先生は、序論で「今日は2つの軸を中心にお話します。素粒子論と特殊相対性理論です」とおっしゃいます。どちらも、何のことやら皆目、見当もつきません。
我慢して聞いていると、説明は進められ、やがて本論に入りました。そして先生は、正面のスライドに複雑な数式をいくつも続けざまに映し出します。その後で、行列式らしきものを大写しされました。全く理解できません。
すると先生は結論としておっしゃっいました。「これは簡単な数学です。これを解くと、クオークは6つなければならないことになります」。最前列の私には全く意味不明です。
講演が一段落し質疑応答の時間になると、驚いたことに、聴衆である学生たちからいくつもの質問が出されます。先生は1つひとつ丁寧に答えていらっしゃる。質問・回答のどちらも、私にはチンプンカンプンです。私は心の中で密かにつぶやいていました。「聞く方も聞く方だが、答える方も答える方だ」と。
講演の最後に先生は言われました。「宇宙の中の物理現象には、解明されていないものがまだたくさんあります。諸君の中で志ある人が、そこに挑戦され、解明されることを期待しています」
会場は拍手に包まれ、講演は素晴らしい雰囲気の中で終了しました。
私はその余韻に浸りながら、車を運転して帰宅しました。超一流の叡智による、全く素晴らしい講演でした。そういう講演を聞けたのは本当にラッキーなことです。もし心残りがあるとすれば、たしかに素晴らしい講演でしたが、その序論・本論・結論のどこをとっても、私には全く理解できなかった、ということだけです。
教訓(2択)
① 何もわからない講演を聞くは時間の無駄なので、やめましょう。
② 自分には何もわからない世界があり、そこですばらしい業績を上げている人がいます。こういう事実と知ることは、自分を謙虚にしてくれるとともに、世の中の広さを教えてくれます。

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