作成者別アーカイブ: 冨永章

万聞は百見に如かず

パーソナルPMコミュニティの会合は、2017年7月に第100回に達しました。ネットでのやり取りも有益ですが、顔を合わせた意見交換には新しい気づきがあるものです。「百聞は一見に如かず」に単純な掛け算をすれば「万聞は百見に如かず」です。(掛け算に意味があるかどうかはさておき^^;)

第100回会合に合わせ、田中史朗さんのリーダーシップと谷島宣之さんのご指導により、そこまでのLessons Learnedの文章が推敲され、読みやすい書籍としてまとめられアマゾンKindle版で出版されました。「田中史朗編著パーソナルプロジェクトマネジメント教訓集」です。PCでもスマホでも、全体を通じて読まれたい方、手元に置かれたい方はぜひご覧ください。

パーソナルPMに関して今年出版された主な書籍は次の4種類です(画像をクリックすると拡大します)。全体が書かれているのは日経BP社の「パーソナルプロジェクトマネジメント増補改訂版」です。どれも「パーソナルプロジェクトマネジメント」でアマゾンをご検索いただくと表示されます。是非ご覧ください。何事も継続は力ですし、やりぬく力を発揮してこそ貢献が産めます。今後も皆様に役立つ発信を目指しています。

100回を記念しメンバーは七夕の会食を楽しみました。そして世話役みたいな筆者にメンバー有志の皆様から、素晴しい記念品を頂きましたことをご報告します。7月7日にちなむ7万円の立派なダイソン卓上LED照明で、筆者の脇机を明るく照らしてくれています。ありがとうございます。以上、ご報告と御礼に代えて。

©2017 Akira Tominaga. All rights reserved.

目的はいつも複数持つ

単純ですが、これは大事なことだと思います。今までこのLL集のどこにも書かれていないことに気づきましたので慌てて追加します。

1つだけの目標へと邁進するのが良いかのように書かれている自己啓発書籍は複数あります。ところが、その一つの目標をめがけて全てがうまく行っておればよいのですが、つまずいたり壁に当たったり、何らかの失敗や不遇はあるものです。

目標がひとつだけですとその際に心が折れやすく、立ち直り難くなります。目標を複数持っていれば、そういう場合に気持ちを入れ替えることができ、立ち直るのが容易になります。

困ったとき何度もそれに助けられてきているのですが、恐らくどなたも多かれ少なかれご経験をされ、思い当たることがあるのではないでしょうか。一つの目標だけに固執するのが間違いになることも多くあります(さらにご興味のある方はJohn Krumboltzの研究成果による著書をご参照)。

組織でも個人でも一般的に、目標(Objectives)の上には目的(Goals)があるべきで、その目的へ向かって目標が複数設定される形が普通でしょう。つまり目標の上の目的がしっかりしていることは重要です。ただ、目標と目的は相対的な位置づけですから、とどのつまりは目的を複数持つのが良いということに行き着きます。さらに、ここでは目標と目的だけ書いて言いますが、より上位のビジョンがしっかりしていることも大切なことだと思います。

上位の目的がしっかりしているのなら、それを目指す目標の一つや二つで失敗したからといって、ひどくは落ち込まないものです。逆に、失敗や不遇の経験がないことこそひどく落ち込む原因でしょう。そういう経験が豊富なら多少の事には負けませんし、偶然や失敗が次へのチャンスへとつながることもあるでしょう。

1つの目標だけに執着せず、柔軟な対応ができるためには、結局は「目的・目標の構造」を意識することが大事だと思います。このあたりは電子書籍「実践パーソナルプロジェクトマネジメント」に書かせていただきました。偶然の出来事や失敗は常にあるものですが、目的をめがけていることこそ、その偶然や失敗が好機となる源だと思います。

当たり前のことかもしれませんが、自分で忘れないためにも書かせていただきました。何かのご参考になれば幸いです。

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錯覚に陥らないためには?

モダンPMは世界の実践にもとづいて形成されてきている形式知です。そこが仮説や成功哲学などとは対照的であると思います。最近はプロジェクト、プロジェクトポートフォリオに続いて、プログラム、EVMとWBSも国際規格化がおこなわれつつあります。規格やデファクト標準では非常に多くの実践者による点検が加えられているので、属人的仮説でないことは確かで、誰かの成功経験や、一人の限られたプロジェクト経験とは異なるわけです。

著名人が自分の経験に基づいて勧めることや、一面の真理だけを取り上げた仮説などに含まれがちな暗黙の前提条件や、場合によっては矛盾に気づかれた人も多いことでしょう。コンサルティングや報道などでも、主張したい仮説について実例で示すケースがありますが、主張に都合のよい例だけが取り上げられることは多いものです。

筆者はその昔ヘビースモーカだったので、たしか「紫煙」とかいう定期刊行物が送られてきていたと思います。そこに大量のデータで喫煙者と非喫煙者の罹患率を比較し「喫煙者は健康」というような説明の記事があったと思います。本当はどちらが原因でどちらが結果かわからないわけで、大量データというだけで錯覚をしてしまいがちです。

そのようなわけで、仮説+実例だけが示され、論理的に説明されていないものは腑に落ちないことがしばしばあるものです。大成功者が見出した法則がもし360度正しい必要十分条件であるのならば、そうやれば読者も成功するでしょう。

ではパーソナルPMはどうなのかといえば、実践の知恵といえども主張如何でそういうケースに陥る恐れを感じないわけではありません。フレームワークの活動の第1番目に掲げられている「A.モダンPMの積極的な学習」は、他山の石を反映した戒めともいうべきものです。ここに書いたような背景でたどり着いた、パーソナルPMの座標軸というわけです。

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成功を他人と共有する!

昔話をすると歳が知れるのですが、このLessons Learnedを書くためには避けて通れそうにありません。

その昔、東北に赴任し、複数のプロジェクトをかけ持ってどれも予定どおり完了しないといけませんでした。昼の移動は時間がもったいないので夜行列車で動き、車内で準備したりしていました。成果が出ると会社の表彰を次々に受け、仕事に自信がつき始めていました。

そこへ大先輩のセールスマンが言いました。「自分だけで結果が出せていると思うな、裏方もいるのだから」。最初は言訳が口に出たのですが、内心ではプロジェクト成功以外は何も考えていない自分に気づかされました。反省したその後も何度か繰り返してしまいました。

東京に戻ったあとですが、新しいプロジェクト複数の経験の後、今度は大プロジェクトを率いていました。お客様は1件なのですが組織がたくさんあり、お客様の各組織とのコミュニケーションが不可欠でした。そうこうするうち、社内を軽視する同じ癖が再び出ていたのです。営業トップから私に一言ありました。「あっ、同じだ」と成長しない自分に呆れ、今度は言い訳などせず、態度を直す努力を始めたのが唯一の進歩でした。しかし簡単なことではありませんでした。

数年後、プロジェクトの事業を率いていました。色々な改善を進めただけでなく、危ないプロジェクトを早くみつけ問題を未然に防ぐことは事業の成長に欠かせません。判明次第自分の直下にそのプロジェクトを異動し、全力で挽回に努めました。数年経って業績や顧客満足度に成果が表れてきました。過去の反省から社内の大勢のモチベーションを欠かさない一方で、いつの間にかシニアな人達は放置するというパターンに陥っていました。もし問題があっても叱れば直してくれる強い人達と安易に考えていたのです。

しかし皆人間ですから強さに大差はありません。今度は同僚の役員からいわば仕事の独占というような指摘です。こうなると表面の態度の問題ではなく、考え方、つまり自分の座標軸には何か不備があると考え始めました。何のために仕事をするのかだけでなく、どんな人生を生きるかということに通じる課題です。そのような失敗を繰り返しつつも、忙しい中でそれを考えるようになりました。

答は簡単ではありませんでしたが、何度も考え書籍を読んだりしてやっといくつかの新しいLessonsに気づくことになりました。その一つが個人的成功を他人と共有するということです。私自身の過去の問題への共通の解答でした。

これを含め複数の新しい教訓にたどり着いたとき、私は無性に後進の指導を始めたくなりましたが、仕事の環境がそれを許してくれません。ここぞとばかり難しいプロジェクトの支援に送り込まれました。並行して大学院複数で夜間に教鞭をとり始めたのはそこからです。あ、やはり年寄りの昔話に陥った感じです。皆様の成果に結びつけるための昔話ですからどうぞ御容赦ください。

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踏み込んでくるソフトウェア

マメに手紙を書かないのを筆不精といい筆者もその仲間だと思います。Facebookを略しFBと書くことが多いようですが、面白いことに筆不精(FB)でもFacebookには頻繁に投稿する人がたくさんいます。つまり反対に筆マメです。
筆者はLinked-inにずいぶん早くに参加したのですが、返事を放置しているうち何度もパスワードを忘れて設定しなおし、今では忘れたまま放置する有様で、コンタクトされる皆様にご迷惑をかけています。

そういうわけでTwitterやFacebookは避けていましたが、研究室の連絡にFBが使われ始めたため、観念して昨年参加しました。1年経ち、案の定発信は稀となり、受けた友達リクエストも溜っています。老人クラブ化するリスクを感じ、時々若い人に承認やリクエストを送りますが、基本的にやはりFB=筆不精となっています。
そこへソフトウェアの技で来る「知り合いかも」が大体は的中なのに驚きます。ネット広告も同様なのですがCX(UX、顧客体験)へ向けてどんどんパーソナライズされ、まさにマス・カストマイズ時代になってきたと思います。

例えば、結婚式へ祝電を打つと付近の住まいの宣伝などが出るのもそれですが、病院の検索をすれば葬儀場や墓のPRが出るのは明らかに行き過ぎに見えます。こういうのは相手の立場に立っていませんから、決して良いCXにならないでしょう。
そういうソフトウェアにこそ相手に貢献する気持ちが必要と感じます。ミッションやビジョンの定義、目的・目標の構造が必要で、例えば「パーソナルPMのフレームワーク」のような定義を組み込んでしまえばよいと思います。人間で実行がなかなか難しい、そういうことでもソフトウェアなら実現できますから(^-^)。
さて、ここには筆不精の直し方が書ければ良いのですが、いくら懲りてもそれはまだありませんため出てきません。ここで言いたいのは、相手に踏み込むには、相手の立場で考えないといけない点です。それを突き詰めていくと、結局のところ相手の成功や成長に貢献するということです。
その昔いろいろなお客様に恵まれたのですが、現場を担当されていたお客様のたくさんの方々とは今でもお付き合いがあります。あとになってその背景や理由をじっくり考えてみますと、運よく相手個人の成功にも貢献できたケースばかりです。

仕事がうまくいっても個人の成長に貢献できない場合があり、そういうケースではこんな関係にはなりません。皆様の場合はいかがでしょうか?
関係者への接し方の具体的な方策として、企業ではマーケティングの方策が使われますが、個人活動では必ずしもそうはいきません。息の長いステークホルダーへの接し方は、表面的な活動だけですむことはありません。長期間の言動には考え方が顕れるからです。パーソナルPMのフレームワーク中の活動の中では、分り難いためかLLのケースがなかなか出てきにくいですが、最も重要な点だと思います。

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大地震への備えは頭で考えるだけでも有益

2011年の東日本大震災は未だに影響が去らないほど大きかったと思います。得た色々な教訓は、前向きに生かしたいものです。

その時某学会の研究大会が文京区の大学であり、筆者は発表寸前で座席でちょうどノートPCを用意していた時でした。揺れに驚きそのPCで調べて大地震とわかりました。妻の実家がある地域への津波の予報がありましたが、親せきが多く心配でした。電話はもちろん通じません。部屋の出席者多数に状況を伝え、筆者は発表をやめてすぐ退出することにしました。まもなく大会の事務局からも連絡が入り、全員が階段を歩いて建物を出ました。周囲の人たちに伝えてすぐに会場を後にしました。

そこからが肝心の話です。まず近くの電気屋でラジオを買い、自転車屋の場所を尋ねました。そのラジオで交通情報を聴きながら、滝野川の自転車屋へと急ぎました。1度使うだけの一番安い自転車を買い、前籠をつけてもらいながら店員にも足を確保したほうが良いと伝えたら、皆さんキョトンとしていました。後日のニュースではその後2時間で都内の自転車が売り切れたようでした。

ふだん持ち歩いている小さな方位磁石を頼りに、自転車で住まいの浦和へと向かいました。途中のコンビニで、念のために電池とパンなどを求め籠に満載して走りました。スマホなら方位も分かり情報も多くとれますが、そういうときは電池はなるべく節約するとよいと思います。途中の牛丼屋が営業していたので、念のために夕食をとりました。交通渋滞と歩道上の雑踏で意外にスピードが出ず、20キロほどを合計4時間かかって帰宅しました。

テレビやインターネットが津波の様子を伝えていました。妻の実家が津波で全壊したのを知るのにも、助かった義母を迎えに行くのにも、その後だいぶ日にちがかかりましたが、ここでは割愛します。使った自転車には滝野川警察署の鑑札がついています。

自転車の鑑札

今もある不要な1台ですが、番犬の代り(?)となっています。津波で失った妻の実家跡の地域にはまだ手がついていませんし、義母は現在は設備のよい介護施設を避難先としており戻れません。とはいえ、嫌な思い出は忘れて、爪痕は教訓としてだけ頭に残したいものです。

実は、その昔東北へ赴任していた時代に宮城県沖地震に遭遇しました。いつもの出張中ではなく珍しく仙台のオフィスにいました。激しい揺れに思わず壁に背中をつけて立ち上がりましたが、多くの社員は日頃のガイドのとおり、冷静に机の下に伏せていました。しかし、揺れで机が勝手に動いて行ってしまうとは誰も考えていませんでしたし、椅子が移動して外に面するガラスに当たりそうで危険でした。

電話は不通となり、交通はすぐ渋滞しました。お客様の状況は非常用電源のあるテレックスや無線などで段々とわかりました。そのうち日没で暗くなり、筆者は8キロ程を歩いて帰宅しました。途中パン屋に寄ると売り切れのため食パンの耳を無料で分けてくれ、電気屋では電池は売り切れのため使いかけの電池を無料でくれたのに感激しました。近所に倒壊した家もありましたが、住まいの借家は外見は無事。しかし案の定、家の中は戸棚や冷蔵庫まで倒れ、ガラス片だらけで惨憺たる状態の暗闇でした。妻や幼い子達のケガがないのが幸いでした。ライフラインが止まり数日間は食料も売り切れ、もらった電池も2日で全て切れました。東京から車でかけつけた社員の食料や非常用ライトなどの救援物資がとても有難かったものです。

そのときの教訓で、地震の際にやるべきことが頭にしみつき、迷わずに行動できたものです。「備え」とはいえ、実際は頭の中だけでの備えにすぎません。それでも、その有無で結果に大きな違いがでます。パーソナルプロジェクトであれ、何事であれ、個人にとって「頭で進行を考えておく」ということが、日ごろからの重要なリスクマネジメントの知恵であり、災害への備えであると思います。もっと厳しい災害がいつなんどき起きるかわかりません。

大災害に備え、リスクや危機への備えを今一度頭の中でシミュレーションし、いざという時の行動を確かめ、腹を据えるのが良いと思います。(2016年10月29日)

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やる気を失う要因の逆は、必ずしもやる気を出す要因ではない

ある時パーソナルPMの追究メンバーで、「自分でやる気を出す方法を整理してみよう」ということになりました。やる気を出す方法は書物やWebにずいぶん沢山出ています。ところが人によっては全然効き目がなさそうなものも見当たります。特定の人の状況での経験や、仮説などですから、そういうこともあるでしょう。

カテゴリー分けを試みると最初はおよそ40の方法になりました。それらの効果を何らかの根拠に基づいて検討したいわけです。プロジェクトマネジメントの知恵は実践の積み重ねによる形式知です。それに倣って、メンバーが自分の経験を振り返り、「やる気が出なくなるケース」をできるだけたくさん挙げようということになりました。
メンバーからは出るわ出るわ、やる気をなくすケースなら何と沢山あることでしょうか。「特別に頑張って結果を出したのに上司が気付かない」「出勤前に配偶者に愚痴を言われる」「昇給が同期より少ない」「皆の前で怒られた」「仕事場の雰囲気が暗い」など、80数ケースも出てきました。カテゴリー分けを試みていった結果24種類になりました。
やる気を出す方法は、組織に有効でも個人には効かなそうなものを外していったん33個となりました。やる気をなくす要因の行とやる気を出す方法の列をマトリックスにすると交点が800近くあります。それらを一つずつ点検していきました。やる気をなくす場合に、各方法が効くかどうかを点検したわけです。
その過程で、やる気のない状態から脱出できるものの、「何かに挑戦したい」とか「やる気に火が付く」といったところにまでは至らない場合があることに気付きました。モチベーション理論における『ハーズバーグの2要因説』の通りなのでした。積極的な動機づけをする要因と、動機を失う要因(衛生要因)とがあり、後者を解決しても前者になるとは限らないという理論です。ハーズバーグが示す動機づけ要因から4カテゴリーをマトリックスの行に追加し、カテゴライズを修正し22種が残りました。つまり最終的には24x22を点検したことになります。

こうして「個人がやる気を出す方法10選」を選ぶことができました。もし私達が基礎理論を先に何も検討していなかった場合は、そのようなことに気付かなかったのではなかろうかと、半分ゾッとしたのでした。

組織のPMではメンバーの動機づけやソフトスキル面がしばしば議論されます。そういう場合も毎度ゼロから議論するのではなく、心理学の基礎的な理論等をある程度踏まえたうえで自由に議論することが、建設的な結論を得るには大事なことだと思いますが皆さまはどう思われますか?

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個人プロジェクトのステークホルダーは特別に大事

現在、我が家は自治会の輪番制の理事、つまり隣組の班長です。この辺りでは班長の仕事は主婦が行いますが、我が家も同じです。集金、資料配布、回覧、打合せ等で、班内の6戸が1年交代で担当し、近所のアパート2つを含む16戸の区域のお世話をするルールになっています。ただ、アパートには階段があったり集金が難しかったりで、何かと手間がかかるようです。

ゴミ置場の世話は一番大変なので同じ6戸で週単位の当番制です。生ごみの日は満杯となり車が通りにくいほどです。前はノラ猫が興味深そうに遊びにきては宝さがしをしていましたが今は生ゴミには全く興味が無いようです。代ってカラスが荒らすようになり始末に負えませんでしたが、幸い旨い食事が他にあるらしく前ほどは荒らされなくなり皆でほっとしていました。

ところが先日、近所に3階建7戸のアパートが突然出現しました。建設が終りシートが外され初めてそれと分りました。梯子状の階段が巡らされたデザイナーズ・マンションとのフレコミです。なるほどそうみると確かに恰好がいいし、階段がジャングルジムのようで若者向きに見えます。しかし各戸へは全部別々の階段上のドアまで行かないとポストがありません。専用ゴミ置き場もなく満杯の置場に相乗りをされそうでこれはたいへん!

何が建設されるのか掲示されず近所の誰も知りませんでした。アワを食った班長、つまり家内が皆と相談した結果、6戸で団結し自治会へ要望を出すことになりました。「新7戸は自治会別班を作り、ゴミ置き場は専用を用意してほしい」と。情報を遮断されていたステークホルダーの反応は一般的にこうなるわけでしょう。専用ゴミ置き場は作られましたが、他の要望は班長交代後も続けられました。最終的に回覧物置き場が1階に設けられ、集金はず少し遠いですがその大家1軒に行けばよくなりました。しかし後味のよいことではありません。

さて話は変わりますが、パーソナルプロジェクトで関係者の賛同が大事な点は同じことでしょう。例えばビジネスマンが人生の大目的を思い立ち、熱心に取り組み始めたとします。勉強時間は夜なので、家族の団欒を早めに切り上げ部屋にこもり目的へと邁進しようとしますが、なかなかそうはいきません。

最重要ステークホルダーである配偶者をつんぼ桟敷にすると問題が起きます。事前に目的が共有されある程度の賛同が得られた場合には、問題はしばらく出ないでしょう。二人で行うプロジェクトは終盤まで大丈夫でしょう。とにかく、成功するにはステークホルダーの協力が欠かせません。個人の場合、関係者はいつもほぼ同じなのでとくに重要だと思います。

パーソナルPMでのステークホルダー・マネジメントのサイクルは、たいていの場合次のような図で表せると思います(見えにくい時は図をクリックしてください)。

Stakeholder Management

もちろん関係者を識別(特定)し「パワー/インタレスト・グリッド」(横軸を関心の強さ、縦軸を影響力の強さとする平面)で位置付けをし、どうマネジメントするか考えるなどのやり方は、組織のPMの場合と同じです。その次に、自分の掲げる目的が相手の視点ではどんな価値があるか、と考えを巡らせるわけです。

小さな成果を得た時に相手とそれを共有することは何よりも大事だと思います。プログラム中の次のプロジェクトへの支援がより強力になります。協力者自身がやり遂げたという達成感を少しでももってもらえば、さらによい支援が得られる点は次の名言に通じることだと感じますがどうでしょうか。

参考: 悠兮其貴言、功成事遂、百姓皆謂我自然 = 悠としてその言をおもくすれば、功成り事を遂げ、百姓の皆我らが自ら然りと謂わん = 成功した際、相手が自分が参画したからこそ達成できたと思うようにする = When the objective is achieved, his members will say: we did it ourselves. (老子道徳経第17章)

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プロフェッショナルの仕事を真似るには

記事をうまく速く書くにはどうするのかと、それを仕事にしているメンバーの谷島記者に皆で伺ったことがあります。すると「記事は結論から先に書くもので、起承転結のむしろ反対。逆三角形です。」と教えられ、皆で感心したものでした。

なぜなら我々が学校で習ったのは、なんでもかんでも起承転結にすることでしたから。五言絶句やらソナタ形式やら、さらに学科でなくとも4コマ漫画でもなんでも同じパターン。○○の一つ覚えで、仕事に就いてからしばらくはお客様にその順序で説明をし、忙しい相手がイライラしたことが何度もあります。

相手の立場で考えることは、プロフェッショナルの仕事なら常に共通ではないかと思います。さらに、仕事の究極の目的を「お客様の繁栄」に据えることによって、社内事情にとらわれずにお客様のために全力が出せると思います。

しかしそこで役立つ仕事のコツは、全部自分で考え出すよりは、優れたプロフェッショナルに習う方が良いことが多々あります。例えば私の場合、システム作りで「先に業務を徹底的に単純化する」ということを、良い先輩に早く習ったからうまく身につけられたと今でも有難く感じています。他にも習ってはじめてわかったということが沢山あります。習わなければ知りえなかったかもしれません。

一方で、一言で書けるコツはどれも分りやすいのですが、物事をどう進めるかについてはなかなかそう簡単にはいきません。わかる大きさに仕事を分解することで、初めて共有ができます。つまりプロジェクトマネジメントのWBS(Work Breakdown Structure)です。冒頭の記事の書き方を習ったものの概要をここに勝手に示します。どこかに散逸しないためにも。

(もし見えにくい場合は図をクリックしてください。)

記事執筆WBS

このスライドがご本人の伝えたいとおりになっているかどうか、自信があるわけではありません。しかし、こういうことを習っただけで、私たちの記事の書き方はそれ以来、とてつもなく進歩し速く書けるようになったのは間違いないと感じます(しかし、ご覧のとおり教えられたようにできていないのではありますが)。

込み入った活動の模範的なやり方をWBSにして活用することはモダンPMの知恵ですが、個人が良い仕事をするための大事な知恵でもあると思います。皆様のご経験ではどうでしょうか?

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TIME IS LIFE

私は自分の時間を管理するために、長年To-doリストを使っています。ルーチンワーク以外のやることをそこに全部書くのですが、媒体はあるときから紙ではなくなり、表計算ソフトを継続的に使っています。小さなことは先にやってから後でそこへ書くこともあります。それが継続のコツだと思っているからです。

ただ、書いたことを全部やろうとすると、時間の足りないことがあります。予定外の急用や、時間の見積り違いがあったりするからです。作業項目の重要度で色付けをし、どこまで丁寧に深くやるかを調節することで、徹夜をなんとか避けてきました。

ところがそうやってもしばしば限界があります。そんな時は、人に約束した項目を必ず守ろうとしますから、犠牲になるのは自分のTo-do項目です。ずるずると後ろへずれるわけですが、それが癖になると大事な目的がおろそかになります。そのことをズバリと指摘しているのが、アラン・ラーキン(Alan Lakein)です。ラーキンはそういう大事な目的を「A目的」と呼びます。

1970年代後半のベストセラー「タイムマネジメント」(How to Get Control of your Time and your Life)の著者がラーキンで、クリントン元大統領著「マイライフ」のまえがきにもいきなり登場します。クリントンは若い時にその本を読んで人生が変わったと書いています。ラーキンはベンジャミン・フランクリンの”Time is money.”を”Time is life.”と言い換えています。

一般的にA目的の活動を避ける理由は、単に忙しいということ以外にも、そもそも無理な設定をしたとか、決めたがやる気がおきないとか、色々ある点をラーキンは細かく指摘しています。最近改めて気づいて読み直したラーキンのやり方は、私が考えてきたような中途半端なものではありません。優先度の低いTo-do項目を切捨てる(人にやらせる事も含む)とか、2割8割の法則を適用し上位2割以外はやらないとか、私から見るとかなり乱暴にも見えます。しかし根本的にはそういう優先順位付けとA目的への執着・集中は極めて大事なことだと思います。

A目的に手が出ないときには、そこから「インスタント・タスク」を切り出したり、随分早くからそのあちこちをつついて、時間が10分でもあればやっておくという「スイスチーズ法」を使ったりなど、あの手この手を持ち出します。

さて、そういえばそのような「スイスチーズ」の絵をどこかで見たなあと、なかなか思い出しませんでした。あるとき別の用事で、相当昔にマネジメント研修を米国で受けた時の資料を見て驚きました。Agendaの中になんとそのラーキンの講義がはいっていたのでした。講義タイトルではわかりませんが講師は紛れもなくその著者です。気づかなかったのもおかしな話ですが、パーソナルPMが大事だとずっと考えていた潜在意識には、そういうこともあったのかと気づかされました。

時代は変わり、その20年後に実践の知恵であるモダンPMも体系化されてきました。また、現代では技術の進歩で個人の行動記録が自動的にとれる対象も増えました。時とともに繁忙感が増し、パーソナルPMを追究する意義は増していると思います。考え方次第ですが人生はプロジェクトで成りたっており、そういう視点ではLife is projects.とさえ言えそうです。PMの知恵が有益で、そこには形式知としての発展の余地があると思います。ラーキンの知恵も、改めて新しい視点でパーソナルPMに組み込もうと考えます。

パーソナルPMは個人が行うミクロなことであるとも言えますが、偉大な物事は個人の意志から始まるとも言えます。一昨日パーソナルPMコミュニティの80回目の会合を行いました。小さくとも執拗に食いつくウッドピンチを、縁起のよい80回目の参加記念品にしました。個人プロジェクトで作った装置を使って、木に刻印をしたものです。ただの木製洗濯バサミですが。

ウッドピンチ

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